潔癖症と動物
犬好きの方を怒らしてしまう表現があるので犬好きの方はご注意してください。
そして世界のお犬様!ごめんなさい!
夕日が綺麗な帰り道、二人並んで帰っていると塀の上に可愛らしい猫が座っているのを見つけた。
「あ、猫だ」
俺はどちらかと言えば犬派だが猫も好きだ。というか動物全般が好きだった。猫はにゃーんと俺たちを見て鳴いた。首輪をしているので野良ではないだろう。
「海は猫好きか?」
「動物全般好きだぞ、見る分にはな」
「……もしかして触れないのか?」
「触れるぞ、手袋越しなら」
「あー、なるほどね」
人に触るのもあまり好きではない海が動物に触れるわけがなかった。
猫が塀の上から飛び降りて綺麗に着地をした。こちらに近づいてくる、人懐っこい猫だ。
「可愛いな~!」
顎のところを撫でてやるとゴロゴロと気持ちよさそうに鳴いた、その時の笑っているような猫の表情はたまらなく可愛い。
猫は海の方へと寄っていく、海はその猫から逃げるようにして小走りで数メートル先の電柱に隠れてしまった。
「なんで隠れるんだよ、触れるんじゃなかったのか?」
「いや、触れるがもし足とかに擦り寄られたり猫パンチとかされたらどうする、汚れるだろ……」
「結局触るどころか近寄れもしないじゃねぇか!」
拒否されているのが分かったのか猫はまたこちらに戻ってきた。抱っこしてみようとしたら思いのほか簡単にできた。猫を抱いて海の方へと近づく。
「ほら~可愛いだろ~」
「近づけるな、やめろ」
猫はもう飽きたのか俺の腕をすり抜けてどこかへ行ってしまった。猫は気まぐれだというのは本当だった。
「あーあ、行っちゃった……まあ、帰ろうぜ」
「その手で僕に触るなよ、そこの公園のトイレでしっかり石鹸で洗ってこい。あと制服を消毒してやる」
海は鞄から消毒液を取り出して俺の制服に吹きかけてきた。
「うわっ!顔にかかる、うえっ!口に入ったああ!」
「樹が暴れるからだ」
言われた通りに手を洗っている時、ふと気になったことを聞いてみる。
「なあ、海の好きな動物って何?」
「そうだな……」
しばし考え込んだ後海は言った。
「魚だな」
「手が汚れないもんな……」
「うむ、食べてもうまいし、観賞用にもなる、素晴らしい生き物だ」
「ちなみに俺は犬が好きだな、お利口だし、可愛いしな」
「犬か……何かいつから始終吠えて唾を散らして、ヨダレ垂らして、抱きついてくるし下品というイメージしかないな」
「犬になにかトラウマでもあるのか?てか、犬はヨダレはあんまり垂らさないと思うぞ」
「そうなのか?」
「多分な……」
「まあ、どの生き物も見るだけで僕は十分だ」
潔癖症と動物は相性が悪いのだとこの時理解した。