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潔癖症と遠足 その3

各自で自由行動となった昼休憩、いつも通りに海と食べようと海に声をかける。


「海、食べようぜ、腹減ったー」

「……どこで食べようか」

「俺は別にどこでもいいけど……あっあそこのベンチに座って食べようぜ。お前、地面に座りたくないだろ?」

「うむ、そうしよう」


ベンチまで歩き何時間ぶりかにやっと座れた。座るとすぐに弁当をリュックサックから取り出した。さっそく開けると色とりどりのおかずが入っていた、唐揚げ、卵焼き、ほうれん草のおひたし、ミートボール……心無しかいつもより豪華な弁当である。

一方、弁当も開けずにベンチに座るのにシートを敷き手を持ってきたお手拭きで海は拭いている、かれこれ十分ほど。


「お前、手の皮剥けるぞ」

「大丈夫だ、僕の手の皮は分厚いから」

「あっそ」


空になった弁当箱をリュックサックに仕舞い、買ってきたお菓子を取り出した。その時、ようやく海は弁当を食べ始めた。


「お前も大変だな」

「どうしてそう思うんだ?」

「いや、だって普通の人はそんなに手を洗わないし、多少汚くても我慢できるだろ」

「ふむ、でもこれが僕にとっての普通だからな。あまり大変だとは思わない」


何だか海に諭されたようなに気がした。自分の思っている普通が誰にでもはてはまるわけではないのだと。何だか申し訳なく思ったと同時に自分がひどくちっぽけな人間なのだと思った。


「なんか悪かった」

「なぜ謝る」


海はなんで謝られたのか分からないといったような顔で俺を見る。それでも俺は謝りたい気分だったのだ。


海が弁当を食べ終わったところでそのリュックサックの中身を尋ねてみた。


「弁当、菓子、水筒、タオル三枚、ティッシュ、折りたたみ傘、消毒液、ナイロンの手袋、虫除けスプレーに殺虫剤……こんなもんか」

「殺虫剤?」

「虫は嫌いなのでな」

「いやいや、自然のものだから殺さなくても。それに害はないだろ?」

「精神に害がある」

「私刑かよ!」


そんな事を言っていたらいきなり海が俺に殺虫剤を向けていきおい良く噴射させた。白い粉が顔にかかる。


「うえっ!何すんだよ!」

「横にオオスズメバチが……」

「蜂は大人しくしてたら刺さないんだよ」

「そうなのか、ちなみに殺られる前に殺るというのが僕の座右の銘だ」

「ずいぶん物騒な座右の銘だな!」



遠足の帰り道虫の話になった。


「蜂は虫の中でも一番苦手な虫なんだ」

「何で?」


まあ、怖いと言えば怖い虫だ。黒い物を見たら敵だと思い特攻してくる。勇猛果敢な虫とも言える。


「何であんなにまとわりついてくるんだ?ストーカーなのか?」

「違うと思うぞ……」

「お前たちが狙っているのはスナイパーだと言ってやりたい……」


ストーカーとそれを殺すスナイパーの海、どちらも犯罪者だ。そう思うと笑えてくる。







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