潔癖症と遠足 その2
「では一組から出発します!」
先生の掛け声で学校を出発する。ここからハイキングコースまでは歩いて二十分程である。
俺の隣には登山家のようなリュックを背負った海が並んで歩いている。
「お前、重くないの?」
「うむ、全く重くない」
海は汗一つかかずにそう言った。慣れているのか足取りも俺と変わらず皆の列についていけている。体力だけはあるのだなと思った。
そういえば、去年の遠足はどうしたのだろうか。去年は俺は海とは別のクラスで仲良くなるどころか話した事すらなかった。
「なあ、去年は遠足どうしたんだ」
「去年は雨が二日間降って中止になっただろう」
「ああ、そういえばそうだったな」
うちの学校は遠足は二日間雨が降ると中止になる。去年は学校でお菓子を食べたっけ。
「去年は僕の手作りの逆さてるてる坊主が効いたんだ」
「いやいや、違うだろ。偶然だ」
ハイキングコースは約一時間程で目的地に着くようになっている。坂道もあるこの道は重い荷物を背負っている海には少々きついかもしれないと思ったがどうやら海は去年の遠足もきっとこの装備で来ていたのだと思う。去年だけではなく毎年。
その証拠にまったく疲れを見せていない。
「お前、肩は大丈夫なの?」
「うむ、慣れているからな。肩は鍛えられている」
「ふーん……」
肩を触ってみると確かに固かったが、これは鍛えられているのではない。
「お前、これはただの肩こりだろ」
「む、違うぞ筋肉だ」
「重い荷物を背負ってたら肩もこるだろ。ちょっと肩回してみろよ」
ゴキゴキと高校生には似つかわしくない音が聞こえてきた。
「その音はやばいぞ!」
「そうか?」
「どうやったらそんな音が出てくるんだよ」
「勝手に鳴る」
「来年はもっと荷物軽くしろよ」
「これでも軽くした方だ」
「どこが!?他の人の荷物の二倍はあるぞ!」
「考えておく」
これは帰り大変なのではないかと心配になる。そうこうしているうちに目的地についてしまった。