潔癖症と回し飲み
放課後、喉が乾いたので俺と海は帰る前に校内の自販機へと寄った。
うちの学校の自販機は結構種類が豊富でメジャーな物からマイナーな物まである。その中でも俺がよく買うものはコーヒー牛乳なのだが生憎本日は売り切れと赤い文字で表示されている。
「あ~コーヒー牛乳売り切れか……何にしようかな。海は何か買うか?」
尋ねたとき海は一番端に置かれている自販機のボタンを押したところだった。
決めるの早いな。
「何買ったんだよ?」
「お茶だ」
海が買ったのは黄緑のパックが目に眩しい有名な緑茶だった。
そういえば海はいつもお茶を買って飲んでいるなと思った。その他の飲み物を飲んでいるところはあまり見ない、せいぜい水くらい。
「海って炭酸とか飲まないのか?」
「……そういえば飲まないな」
「飲めないのか?」
「いや、飲めるはず」
「何だよそれ」
そんな話をしていると久しぶりに炭酸が飲みたくなったので俺はこれまた有名な美味しいサイダーのボタンを押した。
ペットボトルの蓋を開けるとプシュと独特の軽やかな音がする。
飲むと喉にほどよい刺激と爽やかな味が駆け巡る。これが炭酸の良いところだ。
「あー、うまい!」
「おっさんだ」
「……海も飲んでみるか?ほら、反対側から飲めばいいしさ」
俺はこの時はまだ口をつけてなければ大丈夫だと思っていた。
海はもちろん全力で拒否した。
「遠慮する、本当に無理だ!」
「いやいや、うまいから!飲んでみろって!」
「しつこいぞ!」
「何でそんなに嫌がるんだよ!」
「逆に何でそんなに飲ませたいんだよ!」
「うまいから!」
「納得いかん!」
そんなやり取りを続けること数分、とうとう海の怒りは限界突破した。
「しつこいぞ!嫌なもんは嫌なんだよ!」
海は俺のペットボトルを持っていた手をおもいっきり叩いた。
「あっ」
ペットボトルは落下してアスファルトの上にサイダーを振り撒いた。地面からは甘い匂いが漂う。
「ごめん……弁償する」
「いや、いいよ、俺が悪かったし……こっちこそごめんな」
「いや……」
「帰ろうぜ」
「そうだな」
この日から俺は学んだ。
人の嫌がることはたとえ好意からだとしてもありがた迷惑にしかならないのだと。
とあるユーザー様からエピソードを教えていただいたものを参考にさせていただきました。
ありがとうございました!
いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます、