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潔癖症と花粉症

鼻水などの汚い表現があります。苦手な方はご注意をお願いします。

「ぶぇっくしょい!」


このおっさんのようなくしゃみは俺がしたものである。もちろんマスクを付けその上から手で押さえている、そこまでしている理由は目の前に潔癖症を患っている友人がいるからだ。

そこまでしていてもなお目の前の友人、海は顔をしかめている。


「何だよその顔」


鼻声で俺は抗議した。


「何でもない」

「何でもなかったらそんな顔しないだろ……汚いって思っただろ」

「ふむ、綺麗ではないな」

「俺も綺麗だとは思ってないけどさ。別に好きでくしゃみしてるわけでもないんだぜ?花粉症のせいなんだよ」


もちろん海は見ての通り花粉症ではない。だからこそ花粉症の苦しみは分からない、そういうことなのでこの態度なのである。

くしゃみをしたことによって垂れてきた鼻水をかむために俺は鞄から箱ティッシュを取り出す。それを見て海は目を丸くした。


「箱ティッシュなのか」

「ポケットじゃ足りないからな」

「なるほど」


マスクを外すと海はまた顔をしかめた。


「何だよ、また何かあるのかよ」


少しイライラした口調で言ってしまった。しかし、海はただ顔をしかめたまま「どうしたんだよ」と言った。


「樹、お前、顔の穴という穴から得体の知れない液体が出ているぞ!」

「得体は知れてるだろ」


まあ、顔中というのは大袈裟だ。

実際今の俺は花粉症に苦しめられている。目からはうっすらと涙が浮かび、鼻からは鼻水が垂れている、ただそれだけだ。あまり人様に見せられるものではなかったので少し反省した。悪かったとだけ海に謝った。

勢いよく鼻をかむ、すると嘘のように鼻通りは良くなる。


「はあ~生き返る」


鼻をかんだティッシュを教室のゴミ箱に入れて再び席につく。


「頼みがある」


海がやけに真剣に俺を見て言った。


「な、何だよ……」

「……手を、洗ってきてくれないか」

「ああ、悪い、汚いよな?でも直接鼻水は触ってないぞ?」

「それでも、汚いだろ!」

「わかった、わかった!洗ってくるから!」


手を洗いにいくために教室を出る。冬の日の廊下は寒く思わず震える、手なんてできれば洗いたくない、そうだ、海は見てないのだから洗った振りをして帰ろう、そう思っていたのだが。


「……何でお前付いてきてんだよ!」

「いや、信用できないから……」


図星だ。やはりこいつには勝てない。

俺は観念して石鹸でよく手を洗う、鏡越しに海の満足げな顔が写っていたのに何だか腹が立つ。


「洗ったぞ、これでいいよな」

「うむ……」

「ぶぇっくしょい!」

「……洗え」

「さっき洗った……」

「汚いだろ!その手に唾と鼻水が散ってるんだぞ?」

「わーかったよ!洗えばいいんだろ!」


こいつ、すごく面倒くさい。花粉症になればいいのに。


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