潔癖症とレンタルショップ
「なー、海寄りたいところあるんだけどさ行ってもいいか?」
「別にいいぞ。どこに行くんだ?」
俺はこの日を待ち続けていた。そう何を隠そう今日は俺の見たかった映画がレンタル開始される日だった。
「レンタルショップ」
そう言うと海は固まった。顔はまあ、物凄い形相である。結構付き合いが長いので目の前で固まっている潔癖野郎の考えていることなど手に取るように分かってしまうのだ。
俺はそんな海を見て苦笑する。
「大丈夫だって。案外清潔だぞ」
「清潔なわけあるか!あんな場所、菌の巣窟だ!」
そこまでいうかこいつは、俺は呆れ半分で海の念仏のような持論を聞き流す。いちいち聞いていたら埒が明かない。
「行ったことないのか?」
「……ないな」
「社会見学だと思えば?」
「……そうだな、そうかもな、うん」
まだ何か物言いたげな海を無視して俺はレンタルショップへの道を歩いていった。
学校から歩いて十分くらいのところにそのレンタルショップはある。学校近くなのもあり俺たちと同じ学校の制服を着た生徒をちらほらと見かけた。
ここのレンタルショップはDVDはもちろんのことCDや漫画や中古のゲームまで置いてある。時間を潰すのにはもってこいの場所だった。それを物珍しそうに海は辺りにあるものを見ている。
「そんなに珍しいか?」
「うむ……そうだな。僕以外の家族は利用するらしいが」
「へえ、海の家族は潔癖じゃないんだな」
「僕も別に潔癖ではないが……」
これはまた意外なことを聞いてしまった。こっそりと笑った。
ビデオコーナーの一角にある新作コーナーに俺の借りたいDVDは並んでいた。ジャンルは王道的なアクションだ、そこそこ人気だったらしい。
結構な数が並んでいて殆どが借りられていたが一枚だけ残っていたので俺は迷いなくそれを手に取る。
「ラッキー!」
「よかったな、樹」
「おう!」
「新品だったら誰も借りてないだろうし、僕も何か借りようか……」
「あ、俺が見た後貸そうか?」
「む、いいのか?」
「いいよ、感想とか言いたいし聞きたいしさ」
「ありがたい」
感想を言い合うのは何であれ楽しいことなので俺は映画を見るのが先程よりも楽しみになっていた。
次回はちょっとした感想を言い合う小話になると思います。