潔癖症と鍋パーティー 2
机に向かって大嫌いな化学と戦っている時メールの受信を知らせる軽やかな音が静かな自室に響き渡った。見てみるとそれは是澤からのものだった。
鍋パーティーの日程を知らせるメールで集合場所は学校の調理室を借りることとなりクラスの男子一応全員誘ったそうだ。
期末テストの最終日に授業が終わり次第始め、各自何か具材を持ってこいとのこと。
所々に散りばめられた顔文字や絵文字からは是澤の性格が表れている、明るく派手な性格だ。
一方、俺のメールは簡素なもので了解と飾り気もなしに送っておいた。まあ、返信するだけましだと思っておこう。海はメール無精だから送っても返信はない、それどころか読んでいるかどうかすらも怪しい。
「肉でも買っていくか……」
冬だし腐らないし、そして何より俺たち男子高校生の体のほとんどは肉でできている。
たくさんあっても被りはしないだろう。
「さて、続きやらないとな……」
明日でテスト期間も終わりだと思うともう少し頑張ろうという気になれた。
教室が活気に溢れている。それは勉強からの解放感と疲れから来る謎の活力からだろう。
「海、調理室行くぞ」
「そうだな、行くか」
調理室は一階にある。なかなか清潔に保たれていて調理器具もある程度揃っている。
調理室からは早くも笑い声や話し声が聞こえた。
「おー、宮内来てくれたんだな」
「うむ、是澤この間は失礼なこと言ってすまなかった」
海が謝ると是澤は人の良さそうな笑みを浮かべて「気にすんなよ!」と言った。やっぱり是澤はいいやつだ。
「で、何か持ってきたか?」
俺は保冷バックから豚肉を一パック取り出した。
「俺は肉」
「肉か……聞いてくれよほぼ全員肉持ってきてるんだぜ、焼き肉かよ。野菜と言えば白菜が半分とえのきだけだ」
「僕は野菜持ってきたぞ」
「お、さすが宮内!」
そう言って海が取り出したのは椎茸と昆布と半分の白菜だった。
「海、白菜と椎茸はいいけどさ何で昆布?」
「む?知らないのか樹、出汁を取るために入れるんだ」
「へー、はじめて知った」
「……腕が鳴るな」
「は?」
今何か不穏な一言が聞こえたが気のせいだと思いたい。
気がつくと海は鍋の前に陣取っていて早々と鍋のスープを入れていた。味は定番のちゃんこ鍋。まだ何も入っていないその鍋の前に奴は見たこともないような笑顔で立っている。
「さあ、やるぞ」
鍋パーティーで海は謎のスイッチが入ってしまったようだ。