潔癖症の恋愛事情
「あれ?海は?」
六時間目が終わり皆それぞれ教科書を鞄にいれて部活に行ったり友達と帰ったりしている。俺も海と帰ろうとしたのだがその海が見つからないのだ、どこに言ったのだろうか。
友人である是澤に尋ねてみた。
「え、宮内?何かさっさと教室から出ていってたぜ」
「でも、鞄はあるんだよなー」
「ふーん……あ、やべ早く部活いかなきゃ」
「そっか頑張れよ」
「ありがとうな」
それにしても海はどこに行ったのだろうか、とりあえず俺は校舎内を適当に探し始めた。トイレ、隣のクラス、図書室、自習室、どこにもいなかった。
どこにいるんだ、だいたいの場所は探したはずだ、なのに見つからない。
「あいつ、どこいったんだ……」
階段を登りながら俺はふと探してないところを思い出した。
それは屋上だった。
この寒い時期に一人で屋上に行くこともないだろうと思ったのだがまあ、近くまで来ていたし少し見ていくくらいは大丈夫だろう。
冷たいドアノブを回す。ドアを開くと高い金属音が聞こえた。冷たい風も吹いている。
「お?」
そこには海がいたが海の目の前に女子がいた。あまり見覚えがないのだがけっこう可愛い。耳を澄まして盗み聞きする。
「あの、私、宮内くんのことが好きです!」
俺はやっぱり告白かと思った。海はまあまあモテる、がいかんせんあの潔癖症だから同じクラスの女子は恋愛対象外として海を見ているが彼女は俺もあまり見たことがないので違うクラスの子だろう。はてさて、海はどうでるのか。
「すまないが誰だ?」
名乗ってなかったのかよ。
「あ、ごめんなさい、三組の園川です」
「ふむ、園川さんか……」
しばらく海は黙っていた。
いや、何か喋れよ。園川さんが戸惑ってるだろ!
「すまない聞き覚えのない名前だったから」
「あ、そうですか」
「話したことあるか?」
「話したことはないんだけど……」
「え、話したこともないヤツが好きになったのか、珍しいな」
いや、珍しくはないと思うけど、いや、わからんな。でも多分それは一目惚れというやつだ。
「えと、あの……」
「すまないが今のところ俺は誰とも付き合う気はないんだ」
「あ、そうですか……」
「それじゃあ」
それだけか、何かフォローした方がいいって!園川さん泣いてるよ?お前冷たいよ!
てか、こっちに来てるし!逃げないと……
「む、何やってるんだ一樹」
「あはは……」
「何、盗み聞きしてたのか」
「すまん……」
「いや、別に謝らなくてもいいのだが」
「なあ、何で振ったの?」
「む?まあ、今は要らないし、よく知らない人だしそれに……」
「それに?」
「何か、付き合うって手を繋いだりしなきゃいけないだろう?無理なんだ、そういうの」
「あーなるほどな」
何だか妙に納得したがちょっと園川さんが可哀想だなと思った。よりにもよってこんなやつを……。