潔癖症とおにぎりと寿司
テレビで言っていたが最近他人の握ったおにぎりが食べられないと言った若者が急増しているそうだ。
潔癖症の海はきっと食べられないのだろうな。
俺は全然気にならないが、食べれたら何でもいいじゃないか。
翌日、小難しそうな本を読んでいる海におにぎりを食べれるかどうか聞いてみた。海は本から視線をはずさずに言った。
「食べれるわけないだろう、他人の手のひらで握られた米なんて」
「やっぱりな……じゃあさ、サランラップで握ったやつは?」
「……難しいな」
やっと本から視線をはずして考えていた。俺はいい質問を思い付いた。
「なあ、海!」
「む?」
「この地球上にさ、俺の握ったおにぎりしかなかったら食べるよな?」
「食べない、餓死するしか方法がないな……」
「いや、死ぬくらいなら食えよ」
「樹は手を洗ってそうにないからな」
「洗うわ!」
「自分で作ったのすら食べたくないのに他人の作ったやつなんて食べられない」
「そりゃそうだな」
答えはわかっていたがそんなにかと俺は思った。
「じゃあ、寿司はどうなんだ?」
恐らくほとんどの人間が好きな寿司、はたして海はどうやって食べているのだろうか。
「食べない」
再び本に視線を戻して海は言った。
「え?食べねぇの?何で?」
「そもそも生魚が無理だ」
「刺身も無理か?」
「そうだな」
「……何で?」
「寄生虫とかついてたら怖いだろ」
「おお……てか魚に寄生虫とかいるのか?」
「魚によると思う」
「ふーん……」
あまりにも海の考えることが面倒くさすぎてこいつ生きるの大変そうだなと改めて思った。
まあ、本人はさして気にしていないようだから別にいいか。