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えび色の

 左右にくねくねと延びる一本道を、大型バスが唸り声を上げながら苦しそうに登って行く。


 松の間にチラチラと見える落葉樹が、色とりどりに葉を染め上げている。車窓に流れる秋色を、私はぼんやりと眺めた。


 バスに揺られる事三十分。山の峠の停留所で降りて、そこから脇に延びる遊歩道に迷わず足を踏み入れる。以前観た景色が忘れられずに、彼を連れて三年振りに会いに来た。


 ちょっと肌寒いねと、上着の衿をキュッと引っ張りながら、ゆっくりと足並みを揃えて散策する。時折落ちているどんぐりを拾いながら、少しづつ足を進めた。


 順路通りに進もうとする彼の袖口を引っ張って、こっちだよと脇道へ入って行く。


 視界を遮る枝葉を抜けて、ぱっと頭上に高い青空が広がった。目の前には見渡す限りのススキが、萌えるようなえび色に染まっていた。


 この場所に生えるススキだけが紅くえび色に染まる。まるで朱色のじゅうたんのように、優しく撫でる風に揺られて、紅く紅く輝いて、いつまでも眺めていた。


「この景色に会いたかったの」


 彼を一人残し、腰の高さまである草原の中に足を踏み入れる。時の経つのも忘れてススキの中に身を置いた。


 雄大な自然の中の、とてもちっぽけな人間のようで、急に寂しさが込み上げる。


 うずくまりそうになった時、彼が風上に立ってそっと手を握り、寂しさから引き戻してくれた。


「凄いね」


 彼はそう言って、私と一緒にえび色の中に身を置いた。


「来年もその次の年も、一緒に見に来よう。いつか子どもも一緒に」


 突然の彼の言葉に、私は目を丸くした。優しい彼の笑顔。私は言い様のない暖かさに包まれた。






宮崎県のえびの高原は、えび色に染まるススキが、名前の由来だそうです。


私は車酔いが凄くて、自分でハンドルを握っても酔ったほどの、くねくね道でした。


景色は素晴らしですよ!(^^)



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