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苦しみの先に

「もう少しだぞ。頑張れ!」


 そう激をとばされながら、僕はひたすら重い足を動かした。


 歩道と言われるものは殆ど無く、頻繁に訪れる大岩に手を掛けよじ登る。


 僕は何でこんな事やってるんだろう。いつになったら終わりが来るんだろう。



 長袖、長ズボン。帽子を目深に被り、首にはタオル。背には、お弁当の入ったリュックサックがずっしりと重みを伝えてくる。もうヘトヘトだった。止めてしまいたかった。


「もう、帰ろうよ」


 何度もそう言いそうになった。でも父さんは、へたれそうになる僕に向かって、何度も頑張れと、激をとばす。もう良いでしょ。足も腕もだるくて重いよ。一歩も動けないよ。父さんは、しゃがみ込む僕に水筒を手渡した。


 決して止めると言うな。無言の圧力。


 父さんは何も言わないけど、頑張れ。頑張れ。と言われ続けているようだ。


 僕は錆び付いて動かない膝をゆっくり伸ばし、パンパンに張った足に力を入れ、又先へ進み出した。


「あと少しだ、あと少し」


 父さんがあと少しを連呼する。一歩、又一歩、急に目の前の視界が開けた。僕は目を大きく見開いた。


 足元に拡がる分厚い雲。朝日に照らされて金色に輝いている。僕は今までの疲れも忘れ、目の前の景色に心を奪われた。


「お前と、この雲海を観たかったんだ」


 呆然と立ち尽くす僕に、父さんがポツリと言った。


「うんかい?」


「雲が、海のように広がっているだろ? だから雲海だ」


 雲海か、何て素晴らし景色だろう。あんなに苦しい思いをしたけれど、止めてしまいたかったけど、ここに来られて良かった。止めないで良かった。


「父さん。連れて来てくれて、有り難う」


 僕は、これから先どんな事があっても、乗り越えて行ける気がする。




 僕たちは暫くの間、雄大な景色を眺めて、お弁当を食べて下山した。







下山の時は恐かった。立ったら下まで転げ落ちて行きそうで、違う意味で膝が震えた。しやがんだまま足を突き出してゆっくりとおりた。他の登山客に何度も路を譲った。知らない人たちに「頑張って」と励まされた。




産みの苦しみの後には、素晴らし作品が待っている。


苦労したからこそ、手に入れられる成功。


そんな感じで書きました。



12月に、五年生の次男が、初めて宿泊と登山を経験します。か弱い子なので物凄く心配ですが、一回りも二回りも大きく成って帰って来て欲しいと願っています。




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