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白銀の聖騎士  作者: 夜風リンドウ
三章 披露宴は亡霊屋敷にて
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ep30 ――役目を果たした者達――




 アルバートは隙を見て、始原旅団が『元』グラナーデ王城に集結している間に『ある人物達』を探していた。




 現在は一人。あれからゼノスは精一杯泣き叫び、そのまま崩れる様に倒れ伏してしまったので、舟に置いてきたのだ。あそこまで始原旅団共が襲ってくる心配は無いだろう。




 ……ゼノスは、相当ショックだったのだろう。……無理も無い。




 それはアルバートとて同じだ。――例え多くの同胞を殺した憎き相手だったとしても、心の中には確かに奴と友情が芽生えていた。



 死闘を繰り広げていたかと思えば、途端に共闘し合ったり。いがみ合ったかと思えば、直後に杯を交わしたり。




 大切な者を失った時は、共に泣いてくれた。




 思えば、いつもガイアが傍にいたかもしれない。始原旅団を抜けた後は、それはもう毎日の様に。



 馬鹿をやったり、泣いたり、笑ったり。



 殺すとか死ねとか言いつつも……あいつを親友として見てきた。



 何年も……何十年もだ。



 ゼノスのみならず、自分だって悲しい。



「……」



 ふと、アルバートはある場所で足を止める。



 浜辺から街道へと歩き続け、街道を少し行った先。誰かが植えたのであろう美しき花々が咲き誇る花畑にて…………ある場所を見据える。



 街道から離れ、その花畑へと足を踏み入れる。



 朝日と共に花弁が舞い、涼しい海風が辺りを漂う。



 花畑の中央にそびえ立つ、どの木々よりも大きい大樹の前へと、アルバートは辿り着く。




「……これは」




 そこで見た光景に、アルバートは呻きを漏らす。






 ―――大樹には、血塗れの男女が横たわっていた。






 その有様だけで、彼等が如何なる激闘を繰り広げたかが分かってしまう。余程の苦しみを味わい、激痛の果てにこのような結果になったのだろう。




 ……だが彼と彼女の顔は、どこか幸せそうだった。




 互いが互いの手を握り合い、寄り添う様にして……まるで眠っているかの様に、死んでいる。




 アルバートは両手を添え、祈りを捧げる。




 ……果たして、彼等はあの世で幸せに過ごしているのだろうか。



 生という苦しみの無い天国で、互いに愛し合うこの二人は……永遠の愛を築けているのだろうか。



 それは誰も分からない。



 死んだ者に何を語り掛けても、意味が無い。



 ――しかしそれでも、彼等に伝えたい事があった。



 その為に足を運び、この者達に会いに来たのだ。




 アルバートは彼等の前で片膝をつき、今度は握りこぶしを胸に当てる。




 それは同じ騎士に対する、尊敬の意を表する姿勢。



 そして、彼等に伝えたかった言葉を紡ぐ。






「…………若き騎士らよ。お前達の守り抜いた者は、確かにこのアルバートが預かった。――だから友と同様、安心して眠られよ」






 ……風は強みを増していく。





 花々はより一層花弁を飛ばし、世界に豊かな色彩を与える。










 まるで二人の死を受け入れ、祝福するかの如く……舞い続ける。














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