ep0 アルギナス
ランドリオ帝国から西に覆い広がる樹海を抜け、なだらかな平原を抜けた先に巨大な牢獄が存在する。
牢獄都市アルギナス、都市全体が大きな牢獄となっており、その規模は唯一無二の巨大さだ。上層に囚人を監督する警備部隊の居住区、中層には通常の刑を持つ囚人達の集落。
そして地下にある下層は――凶悪な囚人達が居座る危険区域となっている。
彼等は監視こそされているが、牢獄に生きる彼等は非常に自由奔放である。囚人の中には懲役千年をも超える者達もいて、下層を統率している状況にある程なのだから。
そんな猛者達を隔離するアルギナス、無論の事、巨大な力を持つ彼等を制御する警備部隊もまた強力である。
アルギナスを統率するのは、警備部隊大隊長――六大将軍ユスティアラ。
『残酷なる剣豪』と呼ばれる彼女は世界的にも名が通っており、幾多の英雄譚も残している。ある英雄譚では五千人規模の他大陸からの侵略部隊に対し、たった一人で挑み――わずか一夜にして五千人全てを斬り尽くしたとか。またある話では、海底に住まう神話の怪物、クラーケンを一太刀で滅ぼしたという逸話も残っている。
そんな彼女がいるからこそ統率がなされている場所に、今日は妙な珍客がやって来ていた。
その者もまたユスティアラ同様六大将軍であり、赤のジャケットにジーンズという奇抜な格好の青年。
名は――ゼノス・ディルガーナ。
今からほんの三週間前に再叙任を受けた騎士である。




