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白銀の聖騎士  作者: 夜風リンドウ
五章 雪原の覇者
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ep25 戦場の鬼




 ゼノス達と距離を空けた所で、アルバート達は迎え撃つ準備をすることにした。




 準備とは言っても、それほど手間のかかるものではない。



 武器の手入れはもちろんされているだろうし、ましてや戦い方を忘れたということも有り得ない。老いたとはいえ、彼等はかつてこの国中の部族と渡り合い、勝利を掴んできた者達だからだ。



 故に実践面における準備ではなく、アルバートは単に確認をするだけである。



 立ち止まった所で仲間達へと振り返り、彼は遠くで見守るセラハはロダンに聞こえるよう、大きく言い放つ。



「さあ、久しぶりの戦じゃ!我等が国を守る為に、始原旅団のモットーについて確認した上で、あの愚劣な者共をこの手で――」



「おいおいアルバート。ちょっと待ってくれよ」



 突如、ジーハイルが気怠そうな表情で言い挟んでくる。



「俺達は『六大将軍』でもなく、『元パステノン国王』でもない男と戦場を駆ける為に来たんだぜ?なあ皆?」



 彼等は一様にして頷き、声高に言う。




「ああそうとも、俺達は『始原旅団首長』のお前に従うつもりだ!」



「うふふ。あんなかしこまった国王様なんて、あたしらとは性に合わないよ」



「アルバート!昔みたいに、首長時代のように振る舞えば、俺達はどこまでもあんたに付いて行く!」




 と、元団員たちが告げてくる。



「……というわけだ。どうする、アルバート?」



「…………ふっ、我儘な連中じゃ」



 そうは言いつつも、アルバートは顔をにやけさせている。




 ――そう。自分は今まで、首長時代の在り方をすっかり忘れていた。




 始原旅団として国を建国した後、アルバートはパステノン王国の初代国王として即位した。建国したばかりの国に隣国からは多くの干渉を受け、内部では小規模の紛争が絶えなかった。



 いつしかアルバートは始原旅団としての教訓を忘れ、嫌々ながら紛争の鎮静化のために多くの国民を制裁し、外国とは幾度も小競り合いを重ねてきた。最低限の侵略も行ってきた。



 国の利益を第一に考えていたのが、かつてのアルバート。



 ……しかし仲間の言う通り、更にかつてのアルバートは違った。



 思えば仲間達は、首長時代の自分が帰ってくる事を期待していたのかもしれない。ひたすら何十年も……。



 ここでその要望に応えなければ、きっと後悔する。



 アルバートは大きく息を吸い――ありったけの声を上げる。




「てめえ等!今日は久々の獲物だ。呆けた爺婆みてえに怠けきってねえだろうな!?」




 彼から発せられるのは、昔の……始原旅団首長の時の粗暴な口調。



 皆は隣を見合い、さも嬉しそうに笑う。



 天高く拳を突き上げ、あらんかぎりの声で答える。



 

『有り得ない!この身が朽ち果てるまで、我々は戦いに生き続ける!』




 元団員たちが述べるのは、決意の塊。



 誰も静かな余生を過ごせるとは思っていない。老体に鞭を打ってでも、彼等は日々の鍛練を怠らなかった。




「じゃあ更に問う!てめえ等は何の為に――誰の為に戦う!?」




 これは当時、アルバートが何度も問うてきた。



 人間はとても脆い。二回か三回、あるいはたった一回の戦争で心を壊し、自分の目標を失うことになる。



 戦争前には確認をしなければならない。



 自分達が自分達である為に。



 今まで忘れてきたものを、一つ、また一つ思い出すようにして答える。




『――家族に等しい、我等が部族を守る為!』




 誰もが濁すことなく、はっきりと断言する。



 とても単純だが、ずっと忘れていた目標。



 アルバートは響き渡るその言葉を耳にし、静かに瞳を閉じる。



 自分もまた、言葉を選ぶようにして紡ぐ。



「そうじゃ、儂等は子供の時からそう思っていた。国の利益とか、国民全てのためにだとか……そんな壮大な目的なんてなかった」



「ああその通りだ。始原旅団発足はそもそも、部族を守る為にガキ共が立ち上げた集団。いつのまにか国を支える存在になってしまったが……元々は単純なものだったんだよな」



 ジーハイルが懐かしそうに、結束した当時の記憶を思い起こす。



 アルバート達がいた部族が他部族の支配に怯えた時、まだ少年少女であった彼等は武器をとり、部族のために戦うと決めた。



 ――始原旅団の存在理由。



 それは国を支配する中枢組織でもなく、他国を支配しようとする悪名高い団体でもない。



 ……故に、今から見せよう。



 今からアルバート達は、ロダンとセラハの為に戦うのだと。




「――最後に告げる。儂の息子と孫娘を守る為に、その力を貸してくれぃッ!」

 



『言われるまでもない!』




 老い先の短い彼等は、人生最後の戦いに挑む。



 さあ出陣だ。



 若い連中に見せつけてやろうじゃないか。






 覇者の率いる軍勢による、正義のための戦いを――ッ!



















 アルバートは先陣を切る。



 絶対零度の寒さを諸共せず、彼は高まる高揚感と同時に戦斧を振りかぶる。ずしりと重い負荷がかかるが、この鍛え上げられた腕はそれをも支える。



 敵の軍勢は馬鹿正直に突っ込んできており、特に目立った陣形を組んでいる様子はない。敵の全ては歩兵で埋め尽くされ、騎馬や弓兵すら見受けられない。



 ……奴等には覚えがある。



 アルバートだけでなく、始原旅団の団員全員がそう感じていた。



「おいアルバート。あいつらって」



「うむ。……間違いない、かつてこのパステノンの地から追い出した他部族どもじゃ」



 憶測ではなく、それはもはや確信に近い。



 彼等の衣装は他部族が愛用していたものであり、この地で着用する者は誰一人いないはず。



 相手は野蛮で独裁的、常に略奪と惨殺を繰り返してきた。戦い方は酷く粗雑で、彼等には戦略という概念がない。ただ人間の本能に従い、好きなだけ暴れるという動物的な存在だ。



 度々どうしているのだろうと考えた時もあったが、まさかシールカードとなって再び遭い見えるとは……。



「おいおい、よく見れば俺達の知り合いもいるじゃないか。どうするアルバート……って、今更聞く必要はないかな?」



「――当然じゃ」



 ジーハイルに目もくれず、アルバートは更に走る速度を上げる。



 様々な思いはあるが、今は躊躇している場合ではない。



 先手必勝。



 守るべき者には慈悲を、敵たる者には容赦ない鉄槌を。



 鬼の形相を浮かべたまま、アルバートの戦斧が地を叩き付ける。





「――禁技、メギド・クラッシュ」





 メギド・クラッシュ、それは封印されし彼の絶技。



 遥か古の時代、大地の神が考えたとされるこの秘技は、後の世に石版という形で遺された。今まで誰も発見できなかったが、少年時代にアルバートが偶然発見したのである。



 彼はその技を研究し、自分風にアレンジすることで体得したのである。



『……ッ』



 敵軍は急な地震の揺れを感じ、その場で留まり始める。



 自然災害?……否。



 それは人災であり、とある男が引き起こした災厄の予兆。



 ……次の瞬間、奴等の前線部隊は思い知る事になる。




 この時点でもう、自分達は死んでいたのだと。




 急激にその場の地面が大きく膨張し、まるで破裂したかのように地面全体が吹き飛ぶ。



 地面から放たれた土は遥か上空にまで飛び散り、その中には敵軍の戦士たちが無残な死体となって含まれる。



 アルバートの放った一撃で、敵軍の三割が消失したのだ。推定五千人以上はいた軍勢を……いともあっさりと。



 あまりの衝撃に敵軍の中から悲鳴のようなものが上がり、その戸惑いは隊列の乱れとなって表れる。



 ここが好機だ。



 アルバート率いる始原旅団は武器を構え、勇猛果敢に敵軍へと躍り出る。



 双剣を手にする老婆の団員は狂気の笑みを浮かべ、年寄りとは思えない俊敏さで敵を斬り殺して行く。その脇では細身の老人が弓を射っており、百発百中の勢いで敵の額を貫く。他にも多くの団員たちが、とても老体とは思えない動きで戦う。



 彼等だけではない。ジーハイルも自慢の大剣を景気良く振るい、獅子奮迅の如く戦場を駆け巡る。



 攻撃、攻撃、ひたすら攻撃。



 始原旅団は大切な者を守る為に戦うが、その戦法自体は決して守りを重視しない。むしろ攻撃こそが最大の防御であると主張しており、現に今までその方法で守り抜いてきた。



 これまでも、そしてこれからも変わらない。



 アルバート自身も敵の猛攻をかいくぐりながら斬りつけていき、敵の小部隊の隊長を狙っていく。



『――ッ!アルバート・ヴィッテルシュタイン!覚悟し――』



「やかましいわ」



 一切の遠慮もなく、猪突猛進してくる相手の攻撃をいなし、岩盤のように硬い拳を顔面に打ち込む。相手の顔は醜く歪み、その一発だけで死に追いやるほどの威力を発揮する。



 相手が死んだことで周囲の戦士たちにどよめきが走る。どうやら今の相手が小隊長らしい。他愛ないものだ。



 この調子で戦っていこうと思いきや、敵軍から聞こえるラッパの音色が耳に入り、ある戦慄が走った。



「……む」



 予想は正したかったようで、敵軍後方から巨大な岩の様な物体が放たれる。それは空中で弧を描き、パステノン城下町へ向けて飛来する。



 ……なるほど、自分達の注意を町に引かせるわけか。



 正攻法では攻略できないと判断したようだが、それは全くもって正しい判断である。




 ――しかし、わざわざ町に赴く必要はない。




 ある結論に至ったアルバートは、近くで戦う団員達に呼び掛ける。



「ここの敵共はお前達が屠ってくれ!儂は町に飛来する岩を破壊するッ!」



『おうッ!』



 団員達は即座に陣形を展開し、アルバートを取り囲むようにして戦闘を続ける。



 ……さて。



 アルバートは一旦戦斧を収め、代わりに地面に落ちていた武器を拾い集める。

の刃や槍の矛先には血が塗り付いているが、別にこれらをまともに使うつもりはない。



 大きく息を吸い、大きく息を吐き。



 戦場の音さえ聞こえないほど意識を投擲物に集中させ、武器を握る力を徐々に増やしていく。




 そして次の瞬間、アルバートの腕の筋肉が膨張する。




 全身の肉体から蒸気が上がり、その大きな足を大地に固定させ――武器を次々と投擲していく。



 巨体に相応しくない尋常ならざる速さ。武器を持っては投擲し、また武器を持っては投擲。放たれた武器は凄まじい轟音を放ち、寸分も狂わずに岩へと直撃していく。




「粉砕!玉砕!破壊してやる、儂の大切な者を汚す阿呆どもを!」




 血走った眼のまま叫び、尚も投擲する手を止めないアルバート。



 しかし、それでも後方から飛ぶ岩は途絶えない。



 恐らく後方には何台もの投石器が備わり、十分な量の投石を蓄えているのだろう。対してこちらは落ちている武器のみ。数には限りがあり、アルバートの方が圧倒的に不利であった。



 対抗策をすぐに考えよう。そう思った矢先――



「アルバートッ!俺達がお前のために道を作る!だからお前は……後ろの投石機を破壊するんだ!」



「ジーハイルかッ。じゃが敵の陣形は厚い…………ぬッ!?」



 答える最中、アルバートは驚きの光景を目にする。



 ジーハイルを中心に団員達がアルバートの前へと前進し、皆が捨て身の覚悟で無理やり先端を切り開いていく。



 あまりにも無謀な行為に、流石のアルバートも焦りを見せる。



「ば、馬鹿者!己の命を無駄にするつもりか!?相手はシールカードの力によって強化された連中。捨て身の覚悟じゃ斬り殺されるぞ!」



 実際問題、状況は一気に最悪となった。



 シールカードの力によって潜在能力を引き上げられているのか、敵の一人一人の動きは素早く、放つ一撃もかなり重い。既に満身創痍の団員もいれば、血の海に沈む団員も見かける。



 まずい。このままでは全滅する。



 急いでアルバートは前線に出ようとする。が、ジーハイルから予想外の言葉が放たれた。



「アルバート止めてくれるなよ!俺達は始原旅団の在り方を魅せるために戦ってるんだ!……ここでお前に全部任せちまったら……その時点でロダン達は悟っちまう。結局は自分の力だけが物を言うと!仲間なんていらない、家族なんていらない。そんなものは邪魔な存在だと思っちまう!」  


 

「……!」



 アルバートは足を止める。



 そうだ、ジーハイルの言う通りだ。



 ここでアルバートが本領を発揮し、孤独の状態で戦うとしたら。この戦争自体はすぐにでも決着がつく。



 しかしそれでは駄目だ。



 ロダンの説く力こそが正義という論理に拍車をかけ、また支配や暴力という誤った目的を辿る羽目になる。



 家族や仲間を犠牲にした上での……卑劣な支配に。



 確かに力は必要だ。だがその力を強く求めるあまり、ロダンは自分以外のッ存在を蔑ろにしている。



 嗚呼、それでは駄目だ。



 家族や仲間は守るべき存在であり、同時に助け合う仲でもある。その為に力をつけ、アルバートは強くなったのだ。



 ――この戦いで気付いてほしい事は、たった一つ。




 仲間はとても大事な存在だということ。支配や権力を支える道具としてでなく、自分を支えてくれる友だという事実。




 だからこそ、アルバートは仲間と共に切り抜けなければならない。



 自分にそう言い聞かせてくれた親友に、アルバートは感謝を述べる。



「……すまんな相棒。もう諭されることはないと思ったが、またされてしもうたわい」



「ははっ、まあいいじゃないか。その方がお前らしい」



 その言葉に、思わずアルバートは笑みを零す。



 アルバートのそんな様子を見届けたジーハイルは、すぐさま険しい表情となって罵声を上げる。



「おいお前等、なに腑抜けた戦いをしてるんだ!この程度の数、昔のロジューヌ部族との戦いに比べれば全然大したことないぞ!」



『おうッ!』



「――これは何も、ロダンとセラハを守る為だけの戦いじゃない。若い始原旅団の戦士に捧げる、俺達の生き様を魅せる戦いでもあるッ!同じ部族も守れない腰抜けなんて……絶対に思われてはいけないッ!」



『当然だ!全身全霊を込めて、この戦いを乗り切る!』



「そうだ!アルバートと、そして俺達で!今こそ始原旅団の結束を示す時だ!」



 ジーハイルの叱咤に呼応し、全ての団員の士気が高まる。



 相手はその気迫に圧され、徐々に始原旅団の猛攻を受けることになる。



 始原旅団の団員は、傷を負っても動じない。隣で戦う団員が力尽きても、彼等は未来と誇りの為に武器を振るい続ける。



 ……自分達の時代はとうに終わっている。



 しかし、若い世代に何かを残すことは出来る。



 その信念だけを胸に――彼等は命を懸けて戦い続ける。



 決死の突撃が実を結んだのか、敵の陣形に僅かばかりの隙間が出来上がる。その先には投石器が見え、未だに城下町めがけて打ち放とうと準備を進めている。




 ――よくやった。




 アルバートは団員の覚悟と結果に称賛の念を送り、今度は自分が彼等の前へと進み出る。



 団員の視線が集まるなか――。



 究極の奥義を披露する。



「ぬおおおおおおおおおおおおおおッッ!」



 敵の陣から脱出したアルバートは、自慢の戦斧を横に一閃する。



 空を切っただけの一撃……かと思われるが、それは断じて違う。



 一閃の後、戦斧から凄まじいほどの豪風が発生する。豪風は目前の大地をめくり上げ、その大地に設置されていた投石器も藻屑となって破壊される。残骸は原型をとどめる事なく粉砕され、砂のように空気と同化していく。



 だが、豪風は尚も収まることを知らない。



 それらは高い波のように地平線へと押し寄せ、通り過ぎた後には何も残らない。雪も、草も、地表も――





 遥か地平線上にある山のシルエットをも、消失してみせる。





『――ッッ!!??』



 圧倒的実力。越えられない力の差。



 山が消えると同時、パステノン雪原全体が揺れ動く。



 鼓膜が張り裂けんばかりの轟音に耐え、震えの止まらない大地に足を踏み止めながら、敵軍は自分の中に潜む恐怖と戦う。




 ……化け物。




 改めて対峙し、彼等は再認識した。



 アルバートという男は、老いによって力が弱まることはない。



 むしろ一挙一動が洗練されていて――更に勝てない相手となった、と。



 シールカードの加護によって余裕を持っていた敵は、一瞬にして絶望の表情へと変わる。



「ふん」



 そんな奴等に、アルバートは戦斧を担ぎながら告げる。



「……驚いたか?年老いたとはいえ、儂の同志を甘く見ないほうが良いぞ。特に、全員が力を合わせた時はのう。おかげさまで、この老体もついつい本気を出してしまったわい……っと」



 ふと、アルバートは身体をよろけさせる。視界が地面に向いたところで、全身を何とか押しとどめた。



 先程の技のせいで体が悲鳴を上げており、今のアルバートはかなり弱体化していると見える。本人もそれを承知しており、自虐めいた笑みを浮かべる。



「はあ。力は衰えておらんが、肝心の体力は流石になくなりつつあるか」



 今更ながら、時の残酷さというものを実感する。



 昔はぴんぴんとしていたにも関わらず……今ではこの様か。



 愛する者達を守る為と見栄を張ってはみたが、これではそれさえも成せないではないか。



 アルバートは小さく舌打ちをし、視線を前に向ける。



 ――すると、そこには団員たちが立ちはだかっていた。



 彼等はアルバートを守るように壁を作り、その中心となっているジーハイルがこちらを振り向いてくる。



 酒を酌み交わす時と変わらぬ調子のまま、こう告げてきた。



「お疲れ親友。お前ほど頼りにはならないが、こいつらの殲滅は俺達に任せておきな」



「……そうじゃな」



 苦笑し、アルバートは素直に部下の厚意に甘える。いつになく頬を緩ませ、思いやりのある団員に改めて感謝する。



 ……そうなると、自分の役目はあと一つだけ。



 単純明快。それは敵への宣戦布告である。



「――というわけじゃ。今から始原旅団は、お前達を一人残らず消していく。覚悟するんじゃな」



 途端、今度は雪原全体の空気が震える。



 物理的に揺れてはいるわけではない。つまり、敵は空気が震えたように錯覚し、一種の恐慌状態に陥っているのだ。



 敵の戦意は完全に途絶えた――そう断言してもいいだろう。




「よし、勝鬨を上げろ!そしてこのまま斬り伏せていくぞッ!」




『おおッ!』



 皆は言われるまでもないと言わんばかりに、武器を手に敵へと立ちはだかる。

 アルバートもまた、その場から一歩踏み出す。





 この戦いが、息子と孫娘にとって何らかを得る機会にならんことを――一人の祖父として祈りながら。










 




 

 部族の誇りをかけた戦争。



 多くの負傷者と僅かばかりの死を代償に、勝利は始原旅団の方に捧げられた。



 シールカードと思しき力の波動は消え去り、アスフィ曰くもうパステノン王国に潜む危機はないと断言した。




 こうして、六大将軍であるゼノスとアルバートの任務は終わった。







 ――それから二週間後。






 ハルディロイ王城の円卓の間にて、パステノン王国であった全ての出来事を打ち明ける。






 ――その中には勿論、戦争後の顛末も含まれている。








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