任務発表
目覚めるとやっぱり夢ではなくて起床3秒でどっと疲れた。ウィンドウを開くと午前4時。3時間は寝れたようだ。
誰もいない静かな夜。何をさせられるかわからない不安が襲い二度寝もままならない。仕方がないが何か生産性のあることをしようとIEを開き、それっぽい魔法をエクセルに分類わけしてまとめていく。コレが役に立つなんて嫌だななんて思いながら黙々と記録しているとふいに扉を叩く音がした。
「勇者様、朝食の支度が整いました。お着替えもご用意しましたがいかがなさいますか?」
「あー、着替えます。ありがとうございます。」
思ったよりおいしい朝食をとり、脳が目覚めてくると自分がこの状況を受け入れ流されることを受け入れ始めている気がしてくる。
「拒否権ないんだけどね。」
結局のところ受け入れるしかないのだ。先人がこれでもかとばかりに死にたくなければ一先ず受け入れろと念を押して言うくらいである。お願い事をききさえすれば先人が帰る道筋を作ってくれているし、一人じゃない。たった一人ではないのだから。
***
「ということは、宗教戦争なんですね?」
朝食後まもなくきたメイドさんに着いていくと会議室には宰相と昨日のジジィこと神官長がまっていた。彼らの要請は予想通り戦争である。もう帰りたい。
話をまとめると以下である。
長らく勇者を召還する術は国際法で魔国と隣り合わせの国のみが行使できる特権であった。聖教会が召還術を管理して魔国の拡大にあわせて幾つかの国に配布。このイツカミテイロ国の前身アデン帝国もその魔族侵攻時にニポポ海の向こうの国の正教会を通してもたらされたものだった。今から800年前の話である。
召還術がもたらされて100年頃、アデン帝国は異例の魔国との国交樹立により侵攻が止まった。しばらく様子を見ていたが魔族の危機が去ったこの国において召還術は最早不要であると聖教会が召還術の返還を要求。侵攻による被害回復を理由に拒否。この時、聖教会本部は戦わない勇者を召還していた事実を初めて知る。まぁ、まさか技術者召還なんてしているとは思わないよね。
ちょうどその頃、イツカミテイロ国の聖教会では新たな宗派が生まれてしまう。ミーヤ派と高橋派である。それを理由に召還術奪還戦争が勃発。兵力が低いと思われていたイツカミテイロ国だったがほとんどの技術者勇者までもがそれなりに派手な魔法が使えるという意外性で勝利。以降召還術を返還すれば終わるという話でもなく、国力までもが狙われていると判明。相手側は戦力を毎年召還という荒業を使い4年に一回は侵攻してくるらしい。予想どうり通称オリンピック戦争である。平和の祭典で何しているんだ。
そんなわけでこちらも4年に1回戦闘系勇者を召還していて勇者OB会でも承認されて呼ばれたのが俺らしい。
ばからしい。やってられない。俺の平穏がオリンピックに壊されている。
「ちなみにこれ断ったらどうなります?」
「勇者OB会の方から断れない説得が入ると聞いておる。そちらがお好みならご連絡しますぞ?」
肝心の仲間が先人が俺の逃走経路をふさいでいる!恐ろしくて知りたくて知りたくない!
「考えさせてください。それとは別にOBの方とは一度お話がしたいです。」
「勇者魔法すかいぷというものがあるらしく、それを習得できればいつでも可能だと聞いております。まぬうるに載っているそうですよ。」
嗚呼、スカイプ使えるんだ。とりあえず状況説明を彼らに求めることが必要そうだ。
「ではしばらく考えさせてもらいます。失礼します。」