村井さんの場合 その2
俺がした仕事についても書いて行こうと思う。
まず清水さん念願の土壁と煉瓦である。この国には繋ぎの概念がないらしく魔物だか戦争だかでしょっちゅう壊されるくせに拳で破壊できる壁ばかりだった。たまに金があれば木を使ったり石を使ったりしているけどセメントもない現状で土に繊維を混ぜるという概念がないのは情けないほどレベルが低い。努力せず勇者頼みの国民性にぴったりだね!といえる。王都から一番近い粘土質の土は南にあるマウム村よりちょい奥くらいのものがよかった。繊維は北西にあるディオーネにバナナっぽい植物があったのでソレの枯葉を砕いていれた。道具も鍛冶屋と殴り合いの喧嘩を2回ほどして小マシなものもできた。水平がつたわんなかったからそんな道具も作った。後任で必要そうならシュツッツガルドの鍛冶ギルドで「勇者ですけどー村井の道具ほしいんですけどー」っていってくれたらいい。結果として王都のおうちはましになりました!
次につくったのは釜戸です。家と同時進行で設置しました。比較的簡単なので浮浪者のなかで若そうな5人をえらんで家庭用ミニ釜戸職人にした。今まで焚き火同然でしていたのでばかみたいに薪はいるし、温度逃がしまくるせいで調理の火は弱いし。魔法が世の中にあるせいか、「魔法使えない選ばれなかった人間だからめんどい作業しないといけないのだ」と進化しなかった模様。おそらくこの魔法ないと不便当たり前精神で色々と進化してないんじゃないか?
あと高橋さんが優秀だったせいかいたるところに井戸があったんだが水浸しのどろどろで不衛生なので専門外だけど石畳がいいんじゃないかなといったせいで清水さんに丸投げされ石加工の職人とバトル勃発。強い土壁と煉瓦のせいですげー恨み買ってた。こういうのは後々のこと考えてから動いたほうがいいですねという教訓になった。
石加工の職人が仲間になったので一緒に河川整備やらもするようになった。技術はないが知識はあるので王都から出ない清水さんに図面と一緒に二人であちらこちらに行かされる。この後20年くらい石職人とは二人で図面渡されて追い出される、現地で弟子を確保する、工事する、改良する、帰る。コレを繰り返すこととなった。そんなわけで仲良くなった石職人の家に入り浸ったせいでそこの娘を嫁に貰うことになりまたバトル。最終的に石職人の嫁の「ごはんよー手洗ってきなさーい」で終了し、ガキのような友情から大人の付き合いが始まり少し寂しくなる。
こうして60くらいまで職人をした俺は男2人女3人の子供に恵まれあほみたいな数の弟子がしょっちゅう尋ねてきてくれるので勇者というより一般人のようになった。不老でもないので馴染みまくっているんだろう。嫁には遺体を高橋さんに届けて貰う約束もしている。いつか帰還が無事に出来たときには復活した俺はきっと長野の実家あたりに居を構えるだろう。後任勇者たちの話を楽しみに待っている。
第11代勇者 村井努 (左官屋)
加護 HP回復大 鋼の身体 探索