村井さんの場合 その1
第11代勇者として召還された俺は左官屋だった。建物の外壁とかなめらかーに作る仕事だ。田舎にある会社を親父から3代目として2-3年後に継ぐ予定だった。都会の修行も終えて田舎に帰り最近流行のスローライフ向けに土間や釜戸なんかあたりもの修行をしている最中だった。長野の田舎なんだが会社から依頼の職場まで車で4時間かかるのと近所の観光ホテルを依頼主がとってくれたのもあって現場近くに宿泊。夜の10時くらいかな。風呂上り浴衣にビールなんて時に白い光に包まれた。眩しいし中平衡感覚がおかしくなるのを感じて必死にビールを零さないよう努力した。そしたら長い髭をみつあみにしたジジィが超笑顔で俺を勇者と呼んだ。これが西暦2011年の12月10日、アデン歴547年水の月第3週赤の日だ。
その日はジジィからマニュアルを受け取ったが字を読むにも魔法を見るのも悪酔いしたのか気持ち悪いのでさっさと寝た。翌日知らない天井を確認してすぐマニュアルを読んだ。まだ5人分だけだったけどこのときマニュアルを読んでいたおかげでちゃんと任務をこなして退役してこうやって俺の記録も残せていれる。これは5代目高橋に感謝だ。
さて、俺の召還任務なんだがおまけみたいなもんだった。この国すげー災害国家だったんだが、第10代の勇者清水さんはそんなわけで強い街づくりとして呼ばれた元建築家だった。しかしながらだ、碌な建材がない中で強くしろといわれても構造強くても素材がだめだめだった。そんな中ここの技術で材料でできそうなものとして土壁を選び、専門でもないので研究していたところ短気なジジィが「勇者ティミスの望む技術者を」と召還したのが俺だったわけです。このあと対の勇者なんか二度と呼ぶなと経典に書かせた。でもいつ何時頭からすっぱ抜けてやりだすかわかんないから神官の耳には絶対になになにできる奴がいればなぁとかなになにできる人がいてくれたらとかいう発言はしないように。間1ヶ月とかいう召還最短記録はある意味マニュアルができて取り乱さず協力的な勇者が続いた弊害だと思う。無駄な死人や無駄な犠牲者をつくらないようにしよう。どうでもいい用事で呼ばれるということは用なしになったり、できる奴が足りるようになれば殺されやすいということを肝に銘じるように。
あとは先代が書いていないことで知らせるべきは都会と辺境の格差かな。俺は技術職だから都会の整備から河川の集落から魔物の被害が多いところとかとにかくあちこちで実演して現地で弟子を作りまくった。大体今の貨幣価値でいうと2ベル1円くらいで、宮廷平均月収が60万ベルで城下町は35万ベル。城門付の都市は25万ベルで農村が税金納めたあとはほぼ4万ベルあればいい方。現物あるから食ってけるし物々交換してるから多いか少ないかはわからん。あと海や川の近くは身分がだいぶ低いとかで日に150ベル稼げたら幸福だって奴もいた。中都市の浮浪者向け炊き出しを見に行ったんだがあさり一個の超塩頼み潮汁に海綿みたいなかびたパン5センチかける3センチかける3センチ。あとキャベツ2枚。5代目がビタミン取れって言ったからキャベツついたらしいよ。王都外に行かなきゃならん奴は街中でも小金もだが保存食がある程度あったがましかもしんない。コレ読む奴の多くがもっとマシな状態であること祈るけれど。