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プロローグ

 眩しすぎる。包まれた光が少しずつ薄れていくのはわかるが、いかんせん明るすぎた。目が慣れるまでかなりかかる。一体何が起きたんだか。ようやく薄ぼんやり人影が視認できたとき営業スマイルの爺さんが謎のポーズで声をかけた。


「ようこそ、勇者様!お待ちしておりました!」


 自分の眉間に皺が寄るのを感じる。とりあえず俺を「ユウシャ」と呼び、歓迎しているのだけ把握した。


「…これはどういうイベントですかね?軽い説明か責任者をお願いします。」


「此度の勇者様は冷静な方で良うございました。こちらが勇者様が御所望の『まぬうる』という書にございます。我がイツカミテイロ国の前身であるアデン帝国にて召還された元勇者様の命で作られた勇者の書でありまして…」


 じいさんの説明は長い。とりあえず国名もおかしいが『まぬうる』ことマニュアルに釘付けになる俺。何故マニュアルだと解読したかというと『まぬうる』の表紙には『新たな被害者への助言と記録のマニュアル』というちょっと神経質な手書きの漢字ひらがなカタカナが記されていたからである。


「これを読めと?」


「ええ、大体の勇者様はまぬうるをお読みになることによりこの国への理解とお役目についてよくおわかりになるんだとか…ああ、あともう一つこれです」


 じいさんは俺の目の前に右手を差し出した。そしてその手のひらには蒼い火が灯っている。どういう手品だ?


「魔法の概念がない所よりお越しになっているとのことで納得なされるまで魔力の少ないものを幾つかお見せするように伺っております。納得、若しくはお疲れになられたらまぬうるをお渡ししてお部屋でお休みいただくようにと歴代神官長から言い付かっております」


 そして俺はじいさんが疲れ果てて3人目のマジシャンが呼ばれそうなタイミングで疲れたので寝ると部屋に案内してもらったのだった。


***

はじめに


 このマニュアルはこの本を渡される君の状況把握のために先任たちが助言と記録を残すものである。同じ被害者の君に伝えるのは酷だがここは紛れもない異世界で、その証拠に魔法が存在する。試しに小説でもゲームでもいい知っている魔法を思い描いてソレっぽいモーションを取ってみたまえ。それからこの本を読んでより詳細な現状把握や対策をとることを願う。

 一番に知って欲しいことは君は勇者として異世界に召還され、勇者を拒むと死が待っているということだ。このマニュアルの最初の作成者である私は凶作の年に飢饉を押さえ込むために召還された。この神殿は何かにつけて勇者を呼びたがるので他にも魔王退治や隣国の侵略防衛などの荒事から不景気や経済問題なんかの政まで容赦なしに勇者を呼ぶ。そして大体見合った能力を持つ日本人が召還されている。飢饉を防ぐ為に呼ばれた私はバイオ系の大学院生だった。飢饉自体を防いだあともお役が残っていたため運よく長きに渡り生きてこれたし役職もあった。そして公式ではこの神殿で5番目の勇者である私が実際は150番目の召還による被害者だったことがわかったのだ。今の君には無理だろうが神殿が認める功績を作り魔法を熟達できれば地下神殿火の精霊の台座からいける隠し書庫から記録を読むことが出来るだろう。勇者を拒否した勇者は大体2種類に分かれる。1つは監禁か死刑。これは神殿の力が弱いときの対応だ。口封じである。2つ目は監視をつけた放逐。これは拒否勇者がよそで功績をあげてしまった場合神殿がそれをいつでも奪えるようにしたシステムだ。実際奪われたものは1割、そのほかは生きていけなかったり自殺したとあるが事実はどうだかわからない。なので逃げ出すにしても先ずは路銀を頂戴し、勇者として出立してからにすることを強く勧める。逃げ出せるかは世情を見て判断してもらうしかない。

 2つ目に知ってもらいたいのは勇者退役後の身の振りである。私は研究者して残れたが荒事などで呼ばれた勇者は戦いが終わると国に残ることを強く望まれ、拒否するとひたすら刺客との戦いが続く。任務完遂までの間に相談役として一番年次の新しい不老不死勇者に相談するように。一般人の寿命を超越してしまった不老不死勇者は魔族の住む『ユウシャホイホイ国』と今君が居る国、イツカミテイロ国との国境『ロウジンホーム村』に滞在する決まりにしている。

 3つ目が我々の目的である。日本に帰る研究も長期的目標にしているが、召還の廃止と報復である。イツカミテイロ国やユウシャホイホイ国などのネーミングにここに来るまでに戸惑ったと思うがこれは第17代勇者になった近藤が嫌がらせとして縁起のいい祖国の言葉として改名させたものと第18代勇者相沢が秘密裏に魔王の養子となり王位を継いだときに行ったものである。馬鹿げていると思うだろうがここに至るまで大体100年色々あったのである。不老不死の召還者が300人を超えたら国をのっとる計画もしている。不老不死者ならのんびりと、そうでないのなら死亡時遺体を「ロウジンホーム村」に送るように手配し来たるべき帰還の前に必ず起こして若がえさせると約束しよう。

 そしてここから先はどんな理由で呼ばれどう対策したかの記録と今まで召還された勇者のスペックを書き残しておく。君が生き残りロウジンホーム村で先任たちと合流できることを期待する。


第5代勇者 高橋

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