藤本さんの場合 その2
イツカミテイロ国からの召還ですが、私への依頼は「正しい宗教」と「食料改善(教会の力が増すレベル)」というものでした。どちらから突っ込めばいいのかと正直いうと戸惑いましたが、私以外にこの2つの適正がある人を探すのはなかなか難しいと思います。もう、どうしようもなかったのだと思います。
正しい宗教の「正しい」とは永遠の命題です。何を持って「正しい」とするのか、はっきりいってわかりません。しかしながらこの国の宗教が「おかしい」のは確かでした。
軽いところから言いますと教会及び周辺はさながら秋葉原でしたし、乙女ロードも名前どおり存在しました(区画整理後御払いしました)。どうやら教会は人気取りのために文化を武器にしたようです。そして、ビックリマ●チョコのウエハースのように(平成生まれに説明するとオマケが本命お菓子が捨てられるという代物です)教会の本意というものが目減りしていたようでした。
こちらはかなりの時間をかけて人々の祈りと娯楽の切り離しに時間がかかりました。何度も私自身がミイラ取りにもなりかけました。最初は宗派を分けて、ミーヤ派には商業開発地区へ高橋派にはカシュミガシェイへ移転してもらい、本来の機能を回復させるのに大体10年近くかかったと思います。
次に重いものですが、教会に長く居座り深部を細かく正していくうちに、「勇者召還」の歴史について紐解いてしまいました。簡単にいうと我々は「召喚」されたわけではないということが判明し、我々勇者の根底や指針、聖教会本部(イギリスのような位置関係でしょうか)への反発などと後々に遺恨が残る宗教戦争に発展してしまったのです。幸い、イツカミテイロ国は日本列島のような島国でしたし、現在の諸外国の渡航技術ではユウシャホイホイ国以外から突然大量軍勢が攻めてくるという事態には地理上なりませんでした。政策ではなく技術レベルで簡易鎖国状態だったのです。台風形状の魔法が使える勇者を各沿岸部に配置して防げるものでしたが今後新たな技術勇者や時代の波によっては大規模戦争になることも予想されます。
さて肝心な内容なのですが、我々の出身である地球。地球とはこの大地リリミアの聖教会本部による魔法で出来た異世界でした。理解しにくいかと思いますが、リリミアの人類はこのままでは魔族に滅ぼされると考え、魔族のいないリリミアのコピーを作成し、優秀な魔法使いをそこで隔離し適当に何千年か何万年か早送りし、そこから進化した勇者を召喚ではなく「召還」していたのです。我々は最初からこの世界を守る為に隔離し、育成した生物兵器の末裔ということになります。ですから、勇者を「召還」することも研修を終えた人材を本部にもどすような感覚で、我々の葛藤や自由や意思などは帝国や王国だらけのこの世界では全くといっていいほど通じないのでしょう。
キャベツ64年、イツカミテイロ国に住まう我々勇者で不老不死のもの総勢11名はこの事実を受け止めて内乱を起こします。聖教会イツカミテイロ国統括支部とイツカミテイロ国王城に攻め入り、勇者帰還条約を締結しました。中身をまとめますと「この国や世界がこの国や世界出身の者だけで回るように努力し、達成後は二度と召還を行えないよう魔法を消去し、我々勇者は地球に帰る。そのためにはこの国の発展や他国の意識改革など共に長い戦いを続ける。裏切りや怠惰は燃やし尽くすぞ。」という内容です。この勇者帰還条約の元、聖教会の中でイツカミテイロ国の教会のみが勇者召還は非人道的であると教え邪教扱いを強いられることになります。そして、我々勇者の日本帰還への道程には宗教改革、世界改革というものが付随されたのです。
蛇足になりますが食料改善のほうはスパイスの製作ルートを高橋さんに頼んだところポポポポーンと大量生産までもちこんでくれて、教会の隣には私の調合したカレー屋がつく事となり、国民食になりました。礼拝後のカレーはデフォルトになっており嬉しい限りです。
第30代勇者 藤本勇次
加護 スパイスマスター 神の慈愛 不老不死
地球はコピー世界だったという魔法版マトリッ●ス展開。
ちなみにイツカミテイロ国は日本列島ほぼ全域、ユウシャホイホイ国は四国あたりになります。
ロウジンホーム村の位置は淡路島みたいな。
藤本さんのモデルの人、帰国したら連絡ください。