表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

第五話 説明

「隆平・・・」

呼ばれて振り返ると、昇一郎が腕を組んで立っていた。

「あ、戻ってきたの?」

「・・・・・」

「もう、僕の財布返してよ!」

「アイツ等、何モンだ?」

「へ?いやそんなシリアスな顔して誤魔化そうたってそんな手には――――」

「あの三人組は何モンだ?」

「―――乗らないよ・・・、って、三人組・・・?」

「ああ、さっき見たんだ。階段の所でな。三人共かなりの“異形”だった。あんな奴等だ。大層有名だろう?」

昇一郎は言って、ニヤリ、と笑った。

笑っている、というより、楽しんでいる、もしくは楽しもうとしている、そんな感じを受ける。

まるでこれから新発売のゲームを買いに行く子供のような、これから起こる“何か”に胸を躍らせているようだった。

“あの人達”を見ても、笑ってられるのか・・・。

僕も半ば呆れたように笑って、

「教えるよ」

と言った。

ただ、長い話になるよ。と、付け加えて。

「上等だ」

昇一郎は更に強くニヤリと笑った。

ただ時間が時間だけに、説明は五、六時限目が終わった後。

放課後に話すことにした。


「で?」

日が傾き、人が少なくなってきた教室で、昇一郎は僕の隣で言った。

「長い話ってのは?」と。

僕は頷いて、頭の中で整理しておいた説明を始めた。


あの三人組は、この学校でも有名な三人だった。

顔の上部、下部を隠していた二人は実は双子で、一つ上の学年の二年生。

名前は漸樹と鋼器。俗に前鬼と後鬼として知られる鬼と同じ名前だ。

そして昇一郎が一番威圧を感じたと言う男は三人のリーダー格の男で、我有がう朝彦という、漸樹と鋼器とは全くの他人の男。

朝彦の父は某有名大企業の社長をしていたが、小さな頃から息子の朝彦をスパルタで鍛え続けていた。

よくイメージされる“お坊ちゃま”とは正反対に育てられた朝彦は、今ではこの学園でも屈指の実力者に成長した。

漸樹と鋼器には両親が居らず、小さい頃に朝彦の父に朝彦の側近として引き取られた。

今でもその関係は変わらず、未だに漸樹と鋼器は朝彦に忠誠を誓い、朝彦の命令で何でもする。が、朝彦自身二人を部下とは思っておらず、友達と見ている。

朝彦は基本人との付き合いを拒み、漸樹、鋼器兄弟以外とは会話もしない。

あの三人組は周りからは“三連みづれ”と呼ばれて居る。


そこまで説明して、

「それからね」

と、僕は続ける。

授業中鼾をかいて眠っていた人物とは思えないほど、昇一郎は真剣な眼差しで僕の話を聞いていた。

「あの人達は、“生徒会員”なんだ」

と、僕は言った。

昇一郎の眉がピクリ、と動き、

「生徒会員?」

と僕が言った言葉を繰り返した。

だからなんだ?と言いたげな視線が、昇一郎から投げかけられる。

ここで僕は“三連”の説明から、“生徒会”についての説明に趣旨を変えることにした。


この学園の“生徒会”はそこら辺の学校とは全く異なるもの。

この学園での“生徒会”は実質的に教師並の権力を持ち、生徒会の言う事は殆ど絶対。

生徒会員には年に二回交代時期があり、その度に恒例の行事が行われる。


「行事?」

腕組をしていた腕を解いて、昇一郎は椅子にもたれかかった。

「そう、行事さ」

僕も言いながら、椅子に深く座りなおした。

そして、続ける。


行事とは、それまでの“生徒会員”と新たに会員になりたい生徒との抗争。

その抗争の中で択ばれた10人だけが、生徒会員の一員として認知される。

“三連”の朝彦はその生徒会の会員で、漸樹、鋼器兄弟はそれの“予備軍”の一員。

“予備軍”と言うのは本来無いものだが、学園の中の生徒会に含まれていない実力者がそう呼ばれている。

予備軍は生徒会の次に力を持つ。

予備軍の中には生徒会以上の力をもつ人もいるが、様々な理由で生徒会に入らない事もある。


「って感じなんだけど、どう?解った?」

「・・・・・」

「?」

昇一郎は一点を見つめたまま黙っていた。

何だろう・・・?何か思うところがあったのだろうか?

「昇一郎・・・?」

「・・・・・」

「どうした・・・?」

「・・・ンゴ・・・」

「は?」

「・・・グゴ・・・」

「グゴ?」

何だろう、この鼾みたいな声は?

「まさか・・・」

嫌な予感。それを確かめるため、僕は思いっきり息を吸い込んだ。

そして、

「昇一郎ぉぉおおおッ!!!」

叫んでやった。

「ッハ!?何だ!?あ!?あ、うん!そうか!OK!そういうことか!よく解った!」

「嘘だ!今寝てたよね!?目開けながら!何その妙技!?どこから寝てたの!?はっ!?最初!?最初ッ!?会話してたジャン!ちゃんと!何!?寝言!?寝言ッ!?何その神業!?何!?何その「逆切れするぜ?」みたいな険しい目!?僕!?悪いの僕!?違うよね!?ちょっ・・・!昇一郎どこに行く?!走るな!廊下を!くそっ!早い!何だこの速度!?追いつけない!ちょっ!おい!昇一郎ぉぉぉおおおお!」

むなしく廊下に僕の叫び声がこだましました。

無理やり最後をギャグにしました。

よくよく考えると有り得ない学校だと思います。

今回も楽しんで頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ