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第十六話 教室へ

『ある“子”と友達になってもらいたいんだ』

と、美冬先輩は言った。

一時間目が終わった休み時間の時だ。

『ぁん・・・?』

眉間に皺を寄せて睨みをキかせる昇一郎を事も無げにスルーして、先輩は続ける。

『その子も君と同じ転校生なんだ』と。

先輩が言うには、昇一郎が転校してきたあの日、同じ学年の1-Hにも転校生が来ていた、との事。

『ああ・・・、確かそんな事先生が言ってたような・・・』

確かにそんな記憶がある。

昇一郎のイメージが強すぎて、そっちの方は全く気にかけていなかった。というかそんな余裕無かったし。

しかし、一つ疑問がある。

『何で・・・』と。

『何で、先輩がそんな事を?』

第一、別に僕等が関わらなくちゃいけない事じゃない。

そもそも、美冬先輩は最近おかしい。

昇一郎が転校してきてからこっち、一度も道場の稽古に来ていないし、校内でも僕から先輩を見かけることがなくなった。

それに、昇一郎が転校してきたあの日、我有先輩との一件をあたかも予想していたかのような一言も気になる。

『先輩は一体何を―――』

『そんなに難しい事じゃないさ』

僕の言葉を遮って、美冬先輩は首を振った。

目を細めて、二コリと笑う。

そして昇一郎を指差して、

『君は転校生』

『あ?』

昇一郎は更に眉を顰める。

『そして、彼も転校生』

そう言って、今度は1-Hがある方向を指差す。“彼”というのは、その転校生の事だろう。

そうしてこっちに見直って、

『転校生同士、気が合うんじゃないか。そう思っただけさ』

先輩は笑った。



そして今。

「あ〜・・・」

僕達は1-Hに向かっている。

「メンドクセェ・・・」

何で俺が・・・。

昇一郎はさっきから僕の隣でブツブツブツブツと呟いている。

「何で、って、最終的に承諾したのは昇一郎だろう?」

僕はため息混じりで肩を降ろす。

今、食事を終えた昼休み。

『今すぐじゃなくてもいいさ』との事だったから、僕等は自由時間の長いこの時間を選んでいた、って言うわけじゃなくて本当は昇一郎が他の休み時間中ずっと寝てて飯時に丁度おきたからじゃあ行こうかって事で今になっただけです本当は。

ともかく、と、僕は顔を上げた。

渡り廊下を渡って、隣の棟へ渡る。そして角を曲がって目線を少し上に上げれば、

「ほら、ここだよ」

目の前に“1-H”と書かれたプレートが現れた。

1-H。比較的静かな人間が集まっているクラス。島津のような人間は一人も居らず、物静かなクラスとして有名だ。

ただ、今回の転校生がどんな人間なのかで、今後のこのクラスの行方は変わっていくだろう。

例えば、昇一郎のような人間が入ってきていれば、1-Hが1-Aのようになる事は間違いない。

「メンドクセェ・・・」

と、隣で昇一郎が呟く。

「だから」と。

「とっとと終わらせて、とっとと戻ろう、ぜ!」

“ぜ!”と同時に、昇一郎はガラガラガラ!と威勢良く扉を開け放った。

ちょいッ!と思ったが、もう開いてしまったものは仕方が無い。

一斉に集まる「何だアイツ“等”?」という目線に背を向けつつ、僕はゆっくりと昇一郎の影に身を隠した。

「で?」

と、昇一郎は教室内を見回した。

「居そう?」

僕は小さい声で、昇一郎の後ろから聞いた。

「ソイツの顔がどんななのかも解らねぇのに、居るか居ねぇかなんて解るかよ」

「だったら聞いてよ。クラスの人の誰かに」

「あぁ?俺がか?」

「承諾したのか君なんだから、当然だろ?そもそも僕はついてこなくてもよかったんだから」

こそこそと開いた扉の前で立ち尽くしている二人に、視線はこれでもかという程集まっている。

「ああ、もうほら!早く聞いて!」

「わぁったよ・・・」

ったく・・・。と頭を掻きながら、

「オイ、そこのテメェ」

昇一郎は一番手前にいた丸坊主の男の子を手招きした。

「えぇっ!?あ、え?自分ですか!?」

昇一郎のなりに気圧されてか、その子は何故か敬語で恐る恐る近寄ってきた。

早速、昇一郎が聞く。

「なぁ、このクラスに転校生のヤロウ居るだろ?どこだ?」

言って、教室内をキョロキョロと見回す。

「え、あ、今居ないんですけど・・・」

スミマセン、と男の子は頭を下げた。

「で?今ソイツはどこに居るんだ?」

「・・・確か体育館裏に・・・」

「体育館裏?」

どうしてまた・・・。

と思いはしたが、それ以上はその男の子もしらないようだった。

それじゃあ、

「行こうか、体育館裏」

はぁ・・・

溜息をつきながらも、僕達は体育館裏に向かった。

長い間放置してしまいました。

申し訳ありません。

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