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君といた時間   作者: 紀美野 るい
1章~初めての恋~
8/11

第八話~蓮の本当~

「蓮が風邪!?」


私は、演劇具を整理していた手を止めた。


「おうよ。朝練来ないから、メールしたら風邪だって」


「大変だね…。後1週間で演劇会があるのに」


「本当に。アイツ、主役だしなー。」


そう。悠樹と蓮のクラスは、ロミオとシンデレラをやるらしい。


悠樹は、演劇道具係だけど、蓮は、ロミオ役に抜擢されたらしい。


只でさえ、連は、こういうのが大嫌いなのに。


「帰り、一緒に見舞い行こうっ。悠樹」


「おう」


私は、そう笑顔で言って、また、演劇具の整理整頓を始めた。


最近、演劇会の練習とかで、一緒に学校も行けなくて、あんまり喋ってないな。蓮と。


「あの…里香ちゃん」


後ろから、肩を叩かれる。


「あっハイ!」


後ろには、心配そうな麗子ちゃんがいた。


「あ、麗子ちゃん。どうしたの?」


「あの…悠斗さんが、いらっしゃらないのですが…」


「あー。ウサギ役のアイツね」


私は、クスッと笑った。


悠斗は、ウサギ役になったのだ。


ウサギ役の子が、体育館のステージから堕ちて、足を骨折。


演劇を出来るような状態じゃないから、仕方なく演劇道具係の悠斗になったのだ。


元々、ウサギは男子がやるようになっていたから、セリフとかは、男らしいのばっかりなのだ。


「あ…はい。今日は、お休み…なのでしょうか…」


「大丈夫だと思うよ。多分、今日、ウサギ役の服が出来上がるから、来にくいんじゃ…」


すると、横から、ダンッと足音がした。


「良く分かってんじゃねーか!里香!」


私の横に現れた悠斗は、ウサギの服を着ていた。


ウサギの耳に、執事のような服。


私は、あまりにも似合っているので、プッと吹き出した。


「笑うな!!!」


悠斗は、顔を真っ赤にして叫ぶ。


麗子ちゃんも、クスクスと笑っているようだ。


「麗子も笑うな!」


そういって、悠斗は、麗子ちゃんの頭を軽く叩く。


「あはは…可愛らしい…いえ、カッコイイですよ」


麗子ちゃんは、なぜか、顔を少し赤くして、微笑んだ。


「まったく。お前らは」


この2週間程の時間で、麗子ちゃんと悠斗は、凄く仲良くなった。


麗子ちゃんが、悠斗に触れられるたびに、顔が赤くなる理由を私は、何となく感づいていた。


「じゃ。私、今日、日直だから、日誌取ってくる。麗子ちゃんと、悠斗は、演劇具、片付けといて」


私は、麗子ちゃんの肩を軽く叩いて、その場を後にした。






麗子ちゃんと悠斗って何気に、お似合いな気がする。


そっか。麗子ちゃんと悠斗が付き合えば、私が、悠斗の近くにいたらダメになるな。


なんか、最近、我儘かも。私。


悠樹も蓮も悠斗も、私の近くにいてほしいなんて。


でも。どうせは離れる時が来るわけで。


応援しよう。


私は、そのまま、麗子ちゃんと悠斗の元には戻らなかった。








放課後になり、私は、悠樹の教室へ向かう。


「悠樹っ、蓮のお見舞い行こう!」


私は、悠樹に手を振った。


悠樹は、練習しているようだったが、わざわざこっちまで来ようとした。




しかし。



「オラッ。お前、まだまだ道具整理あんだろーが」


後ろの、リーダーらしき人が、悠樹の手を引いた。


「今日だけ!お願いします~」


悠樹は、軽くお辞儀して、その人の手を離そうとする。


「だめだぞ~?里香ちゃん、ごめんね~。今日コイツ居残りだから」


「すまんっ里香!!」


「良いよ!後で来てね」


悠樹も大変だな…。


廊下を軽く走って、昇降口に向かう。


いろんな教室を通るたび、練習している声が聞こえる。


活発だな。


私は、こんな、練習を必死にがんばる皆の声に少し心地良さを感じた。









ピーンポーン…


家の中に、チャイムの音が響き渡る。


『もしもし…』


イヤホンの奥から聞こえる声は、蓮の声だった。しかし、すごくダルそうだ。


「里香だよっ。入って良い?」


『うん。鍵開いてるから』


「無用心だなあ。じゃ、失礼します」


そういうと、ガチャッと切れた音が、イヤホンの奥で聞こえた。


私は、そっとドアを開けて、一応、鍵を掛けておいた。


「大丈夫?蓮?」


私は、急いでリビングに向かう。


蓮は、ソファーで項垂れていた。


「もうっ。ベッドで寝なきゃ」


「だるい…」


「良いから!肩貸すから」


私は、そういって、蓮を立ち上がらせた。


そして、3階建ての家にある、エレベーターの↑ボタンを押した。


蓮の家は、ものすごく広くて、新築っぽい家だ。


洋風で、私の家とは比べられないほど、高級感が漂っている。


でも、常に、両親は、仕事でいなくて、家政婦さんが付いている。


エレベーターがチンッっていう音を鳴らして、ドアを開ける。


私は、エレベーターの中に入り、3階を押した。


3階は、蓮の部屋と、蓮のお父さんの書斎がある。


広い3階を2つで分けてある感じだ。


蓮の部屋のドアを開ける。


そこには、モノクロで占められた部屋がある。


とてもシンプルな感じだ。


蓮は、ベッドにつくなり、ぐったりとする。


私は、蓮の額に手を当てた。


「熱い…病院は?」


「行った。ただの風邪」


「なら、良いけど…家政婦さんは今日はいないの?」


「家族旅行。邪魔するのも悪いから、呼ばなくて良い」


「そう…」


不運だ。


蓮のつらそうな顔を見て、私は胸が締め付けられているようだった。


私は、洗面所で、タオルをぬらして、蓮の額に乗せた。


「ご飯は?」


「ゼリーを少し」


「ゼリー?私が、お粥作っとくから」


「さんきゅ」


そういって、蓮は、目を閉じた。


私は、少し蓮の髪を撫でた。


元気になって…。


すると、蓮は、私の手を握った。


「眠るまで、握らせて」


可愛らしい言葉が、蓮の口から出た。


私は、フッと少し笑い、


「良いよ」


と、微笑んだ。


蓮は、すぐに眠りに付いた。


私は、そっと、蓮の手を離し、お粥を作りにキッチンに向かった。


これでも、私は、結構料理とかは、得意だ。


私は、チャッチャッと、お粥を作り、3階まで、持っていく。


「悠樹、遅いなあ」


私は、そう呟いて、ミニテーブルにお粥を置いた。


私は、蓮が起きるまで、少し眠る事にした。










「里香…」


私は、優しい声にバッと跳ね起きる。


「うわっ」


ゴツッ


私の頭が、誰かのあごに当たったようだ。


「ごめ…」


蓮は、あごをさすって、ハハッて笑う。


「もう大丈夫なの?」


「おう。熱も、だいぶ下がった。お粥、上手かったよ」


「よ、良かった」


私は、さっきからずっと、蓮に握られている手を見て赤くなる。


「あ、ごめ。」


蓮はバッと手を離す。


「い、良いんだよ。じゃ、蓮もだいぶ、回復したみたいだし、帰るね」


私は、そういって、その場を立ち上がろうとすると、蓮が私の手を引く。


「もう少し、傍にいてよ」


蓮は、いつもらしくない言葉を発す。


そのギャップに、私はドキッとする。


「な、何言ってるのよ…。もう、7時だし…」


「良いじゃん。家近いし。もう少しだけ…」


そういって、蓮は、私の胸に顔を埋めた。


「れ…ん…」


蓮に、こんな風に抱きつかれるなんて初めて。。


なんか、恥ずかしい…


私は、ハッとして、蓮の額に手を当てる。


「まだ、熱いじゃない!!」


そのせいで、蓮も理性を失い始めたか…


「大丈夫」


「大丈夫じゃないよ!まだ、寝てなきゃ…」


私は、蓮の体を離そうとすると、蓮はさらに力を強く抱きしめてきた。


「里香…寂しいんだ」


「蓮…?」


「傍にいて」


悲しいほどに儚げな言葉に私は、優しさをあげたくなった。


私は、蓮に抱き返して、


「私は、いつでも蓮の傍にいるよ」


「うん…」


蓮は、優しく微笑んだ。


そしてまた、眠りに付いた。



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