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君といた時間   作者: 紀美野 るい
1章~初めての恋~
7/11

第七話~悠樹の優しさ~

「無理!!!!!」


私は、バッと跳ね上がり、体育館の中、叫んだ。


みんなが、アハハッと笑った。


「たったの腹筋100回だぞ?」


悠斗が、余裕そうに言う。


その態度に、私は、少し腹が立つ。


「アタシ、一応、女の子なんですけど…」


アタシが、体操服で、顔の汗を拭くと、


「あの…里香ちゃん。このタオル使ってください」


タオルを渡してくれたのは、鈴木麗子ちゃん。


大人しくて、タレ目な、可愛い女の子。


一応、演劇部の副部長をしている。


「ありがとう!麗子ちゃん!」


私が、ありがたく、タオルを受け取ると、


「腹筋しない事には、大きな声出ないぞ」


悠斗は、偉そうに口を叩く。


「悠斗って何気に、イベント好きなんだね」


悠斗は、目を見開く。


「…悪いか?」


「ううん。イベント好きな人って良いと思うよ!」


私が笑顔で言うと、


周りにいた、ダルそうに腹筋をしていた男子が、いきなり張り切って、腹筋し始めた。


「え、あ。」


悠斗は呆れた顔で、こちらを見た。


「俺、演劇の服見に行くけど、お前も行くか?」


「え!?もういいの!?行く!」


私が、ステージを降りると、麗子ちゃんが駆け寄ってきた。


「あの…これ台本です。不思議の国のアリスだけじゃ、あれなので、少しオリジナルストーリーも混ぜてみました」


「おおっ!!」


私が、悠斗を手招くと、悠斗も興味津々に読み出した。


「ん、ナイスじゃん!鈴木!」


「い…いえ…。服装、良いの選んできてください」


麗子ちゃんは、少し顔を赤くして、言った。


「うん!」


私は。悠斗の手を引いて、演劇部の部室に向かった。


「あの2人付き合ってんのかな?」


体育館で腹筋していた男子がつぶやいた。


「いつも一緒にいるし、仲良いよな」


「えー。でもじゃあ、悠樹とか蓮さんは?」


「幼馴染だろ?流石、可愛い奴には、かっこいい奴が集まってくるよな」


男子全員でうなずいた。


「里香って可愛いし、優しいし、爽やかな感じだし皆から好かれてるタイプだもんなー。珍しい美人だよ。」


「俺、実際狙ってるけどー、悠斗とかには、勝てないしなー」


「だよなー」


そんな会話を、鈴木麗子は、ジッと見ていた。








「うわー、ギッシリだね。」


私の目の前には、ドレスやら征服やら着ぐるみやらが、クローゼットにあった。


「色々選べそうだな」


悠斗は、楽しそうに、服選びをする。


私は、フッと思い出し笑いをした。


「遊園地の事思い出すなぁ」


「遊園地?」


「うん。悠樹とお化け屋敷行ったり、なんか変なイベントに参加してみたり…」


「兄さんと2人で!?」


「いや、蓮と由紀とアタシと悠樹で行ったんだ。」


「何で、そんなメンバーで?」


これ以上、言ったらややこしくなりそう。


「いや、色々とね」


「フーン」


不貞腐れてる…?


何か、悠斗には色々と惑わされるな。


「あ、これ、アリスにピッタリじゃない!?」


私は、ハンガーを外し、悠斗に見せた。


水色と白のエプロンみたいなかわいらしい服。


これにボーダーのオーバーニー履いたら、良さそう…。


「着てみろよ」


「うん」


私は、女子更衣室に入り、着替えた。


鏡を見ると、まるで本当にアリスのように思えた。


「どう…?」


悠斗は、口を開けたままこちらを見た。


「…いい」


「え?」


「可愛い…」


「!?」


悠斗が、思いがけない言葉を発すから、私は、驚いてしまった。


でも、私は、嬉しくなかった。


何故か、悲しく思えた。


こんなに、私は、悠斗にはまりこんで良いのだろうか。


少し距離を縮めすぎじゃ?


私は、少し、悠斗に魅入っていく自分が怖くて。


だって、もしも私が、一人の人を愛す事になったら、きっと、悠樹とも蓮とも一緒いられなくなる。


「あのさ悠斗。」


「え?」


「悠斗は、恋愛ってどう思う?」


「何だよ。イキナリ…」


悠斗は、一気に顔が赤くなる。


「あのね。アタシ、恋愛っていう感情は知りたくないんだ」


「ハ?」


悠斗は、あからさまに意味の分からないという顔をする。


「だって。一人の人に愛情をすべて注いだら、他の人が離れていくじゃない?」


「何だそれ。一人に搾るから、その人を一番愛せるんだろ?」


「アタシには分からないよ…一人を愛すなんて」


私は、明るいアリスの服に対して、寂しい気持ちでいた。


やっぱり、私って変わってるのかな。


一人を愛して、もしも、他の人が離れていったら…


「どうしたんだよ。里香」


いつの間にか、私の頬は涙で濡れていた。


「だって、だって…美香は…」


「美香?誰?」


「あ、もう、6時だよ。悠斗、帰りなよ。アタシ、もうちょっと練習するから」


「え、俺も…」


「一人にしてほしいの」


私は、下に俯き呟いた。


「分かった」


悠斗は、選んだ服を持ったまま、部屋を出て行った。


静かな空気。


私は、ひとりでに、立ち竦んだ。


涙が止まらない。


悠斗は、何も悪くないのに。


勝手な事言っちゃったな。


美香…。


私の姉。


美香は、もう、この世にはいない。


だって…私のせいで死んでいったのだから。






いつの間にか、辺りは暗くなっていた。


誰も校舎内にはいなかった。


「こわ…い…」


広い廊下に私の足音が響く。


不気味だ。


廊下の電気ってどこでつけるの?


私は、分からずにとりあえず手探りで自分の教室へ向かった。


「ハァ…ハァ…」


あまりの怖さに息が途切れる。


私は、教室の電気をつけた。


「誰か…」


一人で、あんなところで、考え事するんじゃなかった。


一人にしてなんて言うんじゃなかった。


頭の中には、ひたすら後悔が流れていく。




ガラッ


教室の扉がゆっくりと開いた。


「誰!?」


私は、竦んだ足をゆっくりと立ち上がらせた。


そこには、見慣れた姿がいた。


「悠樹…」


私は、悠樹の胸へ飛び込んでいった。


「あれ、電気付いてると思ったら里香か。何で、こんな時間に一人で…」


私は、こんな風になった理由をすべて話した。


「ハハッ、なるほどな。バカだろ?」


「本当、バカみたい。なんか、最近よく感情的になりすぎて…」


すると、悠樹は、優しく私を抱き寄せた。


「美香さんの事、今でも、そんな風に考えてたの?」


「…」


「里香はさー、鈍感すぎるだろ。そんなに、恋人作りたくないなら、優しくしなかったらいいじゃん。」


「でも、嫌われるのは怖い」


悠樹は、悲しそうに微笑んだ。


「とことん罪作りな女だよな」


「え…」


すると、悠樹は、私の前髪を上げて、優しく額にキスをした。


「ひゃっ…」


「これぐらい良いだろ?俺、里香が、他の男を好きになるのが怖いよ」


「アタシは誰も好きになんてならないよ…」


「そうだよな。里香は、俺に心をくれたことは一度もないもんな」


「え!?でも、アタシ、悠樹の事、本気で好きだよ?あ、友達としてだけど…」


「これだけ、お前に愛情注いでるのに、お前は、俺を好きになんてならないんだもんな。他の女なら、こんな事しなくてもホイホイ寄ってくるのに」


悠樹が、悲しそうな目でこちらを見る。


「悠樹…?」


悠樹は、眉間にシワを寄せて、さらに私をキツく抱きしめた。


「好きだよ…里香」


私は、耳を疑った。


好き…。悠樹から初めて言われた。


悠樹は私を…?


「ま、今は、これ以上の関係を求めないよ。」


悠樹は、私の体を離して、私の首筋にキスをした。


「俺に告白させた罰だ」


「え!?ちょっ、キスマークが…っ」


「じゃ、帰るぞ。一人で帰れないんだろ?怖くて」


ムッ…。余裕たっぷりの表情を浮かべる悠樹が憎たらしく思えた。


いつも私の前を歩いてる悠樹は、安心できる場所だったのに、少し、他の意味がある場所になっていく気がした。







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