第六話~演技会?~
あんなに、まじめに、”好きになっても良い?”だなんて聞かれたの初めて。
一瞬、悠斗がを受け入れたいっていう自分がいて…。
私は、恋を知らないのかも。
私も、誰かを好きになって良いのかな?
「あのさぁ…」
登校中。さっきから私を挟んで、なぜか、悠樹と悠斗が威嚇し合っている。
「さっきから、いい加減にしてほしいんだけど…。それにアタシをはさまないで」
「さっきから、何してるんだ、お前たちは・・・」
蓮も呆れた様子で、言う。
悠樹は、蓮に向かって、
「だって!!!!悠斗の奴、昨日、里香に…ムゴッ」
私は、慌てて勇気の口を手で塞いだ。
「あ、アハハハハハ。昨日、悠斗ったら、昨日あたしの弁当食べちゃってさー!もう悠樹ったら、そんな事で怒らなくても良いのに!!アハハハ」
私は、必死に、蓮をごまかす。
「まったく、本当、似てるよな」
私は、蓮と、クスっと笑った。
「演劇会?」
「そうそうー。今年から、やるんだって!」
由紀は、私の筆箱をいじりながら、言った。
「へぇ!楽しそうじゃん!!」
「だよねー!」
演劇界かぁ。
私は、演劇とか、得意なわけじゃないけど、イベントとかは好きだな。
「へぇー、そんなんあるんだ」
悠斗が、私の頭に手を乗せた。
「和泉君!」
由紀は、驚いた様子でこちらを見る。
私は、ハハッと苦笑した。
「俺、里香の、姫姿とか見てみてーな」
悠斗は、愛らしい笑顔を見せる。
きゅん。
少し、胸が締まるような感じがした。
悠斗は、クラスの女子に呼ばれて、じゃなっと、言って、クラスの女子の方へ行った。
悠斗は、最初のイメージが強烈だったけど、なんか、前より良い雰囲気になって、クラスに馴れて来たみたい。
微笑ましい事だ。
「では、今回のホームルームでは、演劇会の出し物と役回りを決めたいと思います」
クラスがざわついた。
初めての行事に、心が躍らされる。
「えっとーでは、何が良いでしょうか…」
すると、ある女子生徒が、挙手した。
「あの…不思議の国のアリスとかどうですか?」
ワァッ…とクラス中が盛り上がった。
「アリスか…。そうだな。楽しい劇だし、そこまで難しいストーリーでもない」
先生は、うなずいた。
「よし、じゃあ、アリスで良い人は、手を挙げろ」
すると、みんな、手を振り上げた。
私も、楽しい劇になりそうで、手を挙げた。
「よし。じゃあ、決まりだ。役回りだが…」
先生が、役回りを説明しようとすると、悠斗が手を挙げた。
「アリスは、里香が良いんじゃね?」
「中嶋?」
先生がいきなりの発言に驚いているようだ。
私もいきなり名前を出されて驚いた。
すると、クラスの男子が乗ってきた。
「俺も中嶋が良いと思う!元気なイメージだし、顔も可愛いし、アリスにピッタリじゃね?」
他の男子も頷いた。
「ちょ、ちょっと待って…」
私が勝手に流れていく話に項垂れた。
「何だ?里香は嫌か?」
悠斗が、あまりにも私を期待している目をしているから、私は、顔を横に振った。
「よし。じゃあ、決まり!先生、別に良いだろ?」
すると、学級委員長の女子が、バッと席を立ち、
「ちょっと待ってください!!勝手すぎます!女子からやりたいって子がいるかもしれないじゃないですか!」
悠斗は、怪しい顔を浮かべて、
「じゃあ、いるのか?里香より可愛くて、アリスに合う奴が」
「え…えっと…」
可愛いなんて、言葉を出すから、私は、つい顔が赤くなってしまう。
「ほら、いないだろ?里香に決定だ」
クラス中がワーッと拍手をする。
「よろしくお願いします・・・」
私は、乗り気になれないものの、練習に入っていくのだった。