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君といた時間   作者: 紀美野 るい
1章~初めての恋~
5/11

第五話~変な人だけど優しい人~

「今日から、転入生がこのクラスに入ります」


先生が、いきなりの報告。


クラスはざわつく。


「誰だろ…こんな中途半端な時期に。」


教室のドアが開き、男子生徒が入ってきた。


男子…?


和泉いずみ悠斗ゆうとです。よろしく」


冷たい目。金髪。乱れた制服。整いすぎてる顔。低い声。


「えーっと、あ、里香ちゃんの隣が空いてるわね。そこに座って」


「はい」


和泉君に、私は少しお辞儀した。


しかし、無視して、席に座る。


少し、睨まれた気がした。


一時間目の授業が終わり、私は、和泉君に、


「よろしくね」


と一言言った。


「喋りかけるな」


そういって、和泉君は立ち上がり、教室を出た。





…。


アタシ嫌われてる!?




「里香~」


由紀が、いつも通りの明るい声で喋りかけてきた。


「あ、由紀」


「えへへ。そう、気まずそうな顔しないでよ!!結果、蓮くんから聞いた?」


「え、まあ、うん」


「そっかぁ。ありがとうね!応援してくれて」


「そんな…」


由紀は、きっとすごく辛いんだろうな。


「由紀、開き直って次、頑張ってね!いつでも応援するから!」


「当然じゃあん!里香も彼氏作りなよ!応援するから!」


「ありがと!」


やっぱり、友情だよね。


嬉しいよ。こんな友達がいて。


それにしても…今度は、転入生にそっけない態度取られるし…。


でも、冷たい態度取られるのって、あたし、一番嫌なんだよね!


仲良くなるように頑張ろう!









4時間目の授業が終わり、私は、すぐに和泉君に喋りかけた。


「一緒に、お昼食べよ?」


和泉君は、露骨に嫌な顔をして、


「はぁ?」


と言った。


「ね?この学校、屋上とかもなかなか良いよ!」


「変な女だな。」


「え?」


「良いぞ。屋上で食べる」


「ホント!?」


なんか、幸先いいぞ♪







「どう?結構綺麗でしょ」


「だな」


購買部で買ってきたパンを私は、和泉君に渡した。


「はい。焼きそばパンでよかった?和泉くん」


私が、手渡そうとすると、和泉くんは、私の手を引っ張り、私は和泉君の足に乗っかった。


「え、ちょ!!」


「で?お前、何が目的?」


「へ?」


「だから、俺の体か?金か?ま、俺は顔だけで金とか持ってねーがな」


意味の分からない言葉を発する和泉君が虚しく思えた。


「何言ってるの?」


「俺を誘うなんておかしいだろ。あんなに、嫌な態度取ってるのに。他の女なら、逃げていく」


「あたしだけじゃないの?あんな態度取ってるの」


「ん?まあ俺、人に優しくするとか苦手だし。自覚はある」


「なんだ~!あたし嫌われてるのかと思ってた」


「は?なら、何で、俺に近づく…」


私は、自分の手を和泉君の頬に寄せた。


「私の幼馴染と似てる。蓮って言うんだけど、最初会ったとき、すごく冷たくてさ。でも、すぐに仲良くなったんだ。アタシ、人から冷たくされるのって、すごい嫌なの。だから笑って」


「ふっまったく変な女だな」


「あ、笑った!かっこいいじゃん!ツンってしてるより笑ったほうがカッコイイよ!」


「な…うるせー」


和泉君は、少し赤くなって、目を逸らした。


「お前、名前は?」


「中嶋里香だよ」


「よし、里香!俺の事は悠斗って呼べよ」


「うん!」


「顔もまあまあだし、スタイルもまあまあだな。気に入った」


「それ褒めてるの!?」


「褒めてんだよ。」


悠斗の笑う顔はとても眩しくて。


やっぱり、お昼誘って良かったな。



悠斗は、私の腰を持ち、足から降ろした。


「さ、焼きそばパン食う」


「私は、お弁当だけどね」


「お前の手作り?」


「うん…まあ。最近、やっと慣れてきてさ。前までは、ありえない程グチャグチャだったんだけど。」


「ちょっとちょうだいよ」


そう言って、悠斗は、サッと卵焼きを取り、口に入れた。


「ちょっ、だめ…」


「うおっ、すげー不気味な味…ぶふっ」


「もう笑わないで!!!」


「冗談。おいしいよ。ちょっと砂糖が多い気がするけど…」


「しょうがないじゃん。アタシ、甘党なんだもん」


「うん。甘党って顔してる」


悠斗のイタズラっぽい顔は、とても愛らしくて、


こっちまで、微笑ましくなる。


すると、悠斗がいきなり、アッ!と声を出した。


「ん?」


「そーいえばさ。伏見悠樹って知ってる?」


いきなり悠樹の名前が出てきて、私は驚く。


「知ってるも何も、幼馴染だし、隣の家だよ」


「え!?まぢ!?じゃあ、俺もお前んちの隣だな」


「え?」


悠斗は、少しニヤッと怪しい笑みをこぼして、


「俺、悠樹の双子の弟なんだ」


私は、悠斗の顔をジーッと見る。


そういえば、眉毛の形とか、目の色とか、顔立ちが似てるかも…。


「双子の弟がいたなんて聞いたことないよ!」


「ま、生き別れの弟だしなー」


悠斗は軽く残酷な事を口にした。


生き別れ…?


どういう事?


「悠樹の家が複雑なのは知ってたけど、生き別れの弟なんて…」


「俺たちが、産まれる事を、俺の親父が反対してたんだ。最初はな。だけど母さんは産んだ。みんなからの反対を押し切って」


「お母さん、すごく良い人だしね…」


「だろ?で、親父は、しょうがなく、俺だけを引き取ったんだ。親父は、最低な奴だったよ。女と遊んでばっかで、お金もないし。だから、俺は、大体祖母の家にいた。けど、親父が、アル中で死んだんだ」


「亡くなられたの!?」


私は、悠斗の、残酷な現実に心が押しつぶされそうな気持ちになった。


「うん。で、俺は、母さんとか悠樹と会いたかったし。ココに戻ってきた。今は、悠樹んちにいるよ。」


「悠樹からそんな事一言も…」


「俺が言うなって言ったからな。アイツと俺、性格とか全然違うし。アイツのイメージが悪くなったら、嫌だしな。」


「何でそうなるの!?悠斗、すごく良い奴じゃん!!」


悠斗は、私の頬を手で撫でた。


「ありがと。」


泣きそうになった。


悠斗は、すごく切ない顔でこっちを見る。


抱き締めたいな。


「悠斗。。。」


「大丈夫だっつの!俺、強いしさー!腕比べすっか?」


「もう…。よしっ、悠斗、携番交換しよ!メルアドも」


「良いのか?」


「何で?友達でしょ!あたしたち」


「俺、あんま友達とか馴染みないんだけどな。大体女遊びとかの関係しか」


「はぁ…。バカでしょ。女遊びなんかダメだよ。一人の人に対して恋してみなよ!きっと、自分の心がどれだけ純粋か、分かるよ」


そう。由紀だって。一人の人を愛することは、すごく綺麗で美しいこと。


「…じゃあさ、俺、里香のこと好きになっていい?」


いきなりの告白に私は、唖然と驚く。


私は、口を開けたまま黙り込んでしまった。


なんて言えば良いの?


すると、悠斗は、私を抱き寄せた。


「俺にこんなに優しくしてくれるのは里香だけだよ。」


そういって、顔を近づけてきた。


「ちょっ…まっ…イヤ…」


私は、がんばって、体を離させようとするけど、力が及ばない。


もう、キスされる!!!!!というところで、バンッと扉が勢いよく開く音がする。


「何してんだ!悠斗!」


これは…


「兄さん。いやー、もっと空気よめよー」


すると、悠樹は思いっきり悠斗の頭に拳骨をした。


「痛っ!!!」


「え…悠樹やめ…」


私は、あわてて、止めようとすると、悠樹が、ハァとため息をついた。


「まったく。お前の女遊びに里香まで突っ込むなよな。一緒に、里香と昼飯食おうと思って、教室に行ったらいないし。由紀ちゃんにどこにいるか聞いたら、悠斗と里香が屋上にいるって言われるし。んで、来たら、キスしようとしてるし。」


「アハハ」


悠斗は、困ったように笑った。


「もう、私、教室戻るから!!!」


私はそういって、赤くなった顔を隠しながら、屋上を出た。


すごい…心臓がバクバク言ってる。


悠斗君のさびしそうな顔が頭から離れない。


私は、悠斗くんに告白されたのか?


考えても考えても悠斗くんが私を好きなのを納得できなくて、


考えるのを止めた。


「もう、どーでもいっか」


私はそういって、歩き出した。


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