2話:鉱石売りと買い人
「…あ、あの、今っていくらほど…」
来た。ついに来た。来ることは分かっていたがこれほど早いとは。
「今はざっと…これくらいですね」
電卓の値を見て目を見開く。まさかと思った。
「50…億…?」
「えぇ、私の計算に狂いはありませんので」
「でも、まさかそんなに」
「払っていないとは言わせませんよ」
目の前にいる人物…黒崎瑪瑙は契約書を見せつけてくる。確かに、利息やら手数料やらでそれほど膨れ上がっている。
「…ところで」
瑪瑙が切り出す。
「あなたの娘さん…雲宮舞華、さんでしたよね。彼女、輝鉱病の被病者でしょう?」
言われて驚く。冷や汗が止まらない。何故その事を知っている?と聞きそうになった。
「そんなことございません。何故そう思ったのですか?」
できる限り冷静に話す。
「彼女が産まれた病院が『鉱床』ですから。ああ、その顔、存じませんでしたか。輝鉱病の者が多数産まれた病院なんですよ」
そうだったのか。そんなことは聞いたことがなかった。
「でも私の娘は違います」
あの子を守らねば。その一心で嘘を貫き通す。
「……あなたの夫様が、どうなってもよろしいのでしょうか?」
顔から血の気が引く。娘だけではなく夫まで…?
「……………」
どちらを選んでもどちらかを失う、なら
「……分かりました。確かに娘は、輝鉱病の被病者です」
娘を売ってしまった。夫を助ければ、また子供は作れる。それに、もし夫を選んで嘘をついていたとしてあれが助かるとは思えない。
「…やはりそうでしたか。彼女、買い取らせてください。借金完全返済に…20億ほどでどうでしょう」
借金含めても70億?安すぎる。あれにはまだ価値がある。しかしこれ以上上げようとすると…
「分かりました、それで良いです」
「契約成立、ハンコくださーい」
そうして、契約書にハンコを押す。これであれはもう、私たちの娘ではなくなったのである。




