第30話 宿命の戦い〈急〉
僕と芹沢鴨は、薄暗い地下室のなかで戦った。
ガギィン、ガゴッ、ガギッ、ガヂィーンッ。
刃と刃を激突させ、時々、火花が散る。
この戦いのなかで、芹沢は、
「沖田君のような剣豪と出会えたことだけが」
と、言い、さらに言葉を続ける。
「この私の生涯、唯一の幸せだ」
「大袈裟だな、でも、光栄です」
「戯言ではないのだぞ、沖田君」
「有難う御座います。芹沢先生」
僕と芹沢は互いに、
剣客としては認め合っているのだろう。
しかし、その出会いは悲劇的で、
幕末の京都でも、この異世界でも、
「僕たちは、いつも殺し合っていますね」
「それが宿命であり、君と私の戦いだよ」
この時、見物していたロキが、
「もう対話はいい。早く、斬り合え!」
と、大声でヤジを飛ばした。
その膝の上に座ったアヤセは、心配そうな目で、
僕を見ている。だが、その時、
「神道無念流、芹沢鴨、参る」
「天然理心流、沖田総司、お受けします」
両者は、ザザッと、一気に間合いを詰め、
「おりゃぁーッ!」
「イヤアァァーッ」
気合一閃。互いに激烈な斬撃を放った。
グオン、グオン、グオォン。
僕は渾身の三段突きを炸裂させる。
次の瞬間、二人の身体が交錯して、
ズシャアァァーッ。
芹沢の首から、多量の血が噴き出した。
三発目の突きが、直撃したのだ。
「ぐ、ぐお、ぉ」
声にならない声を発した芹沢は、両目を見開き、
バタリ。
と、その場に倒れる。
地下室の床は、一面、血の海。この時、
ロキは素早く、地下室から逃げようとした。
だが、アヤセが、
「待ちなさいよ」
背後から追いすがり、
ブスリッ、
短剣で背中を、深々と刺し貫く。
「な、何をする、ア、アヤセ」
おそらく、それは致命傷だろう。
「トールさんの仇に、決まってるでしょう」
さらに、アヤセは血塗られた短剣を、
ブズッ、ズザッ、ザグッ、グズッ。
執拗に突き刺し、ロキを滅多刺しにした。
ロキは、その口から血を吐く。
「俺は、死ぬの、か、はぁ、うぐッ」
「もっと苦しみなさいよ。極悪人が」
返り血を浴びたアヤセが、吐き捨てると、
ドシャリ。
と、ロキは崩れ落ち、絶命したようだ。
薄暗い地下室には、死体が二つ。
その空間には、血の匂いが飽和している。
「アヤセさん、これで全てが終わったのかな」
「そうね、総司君」
その後、僕とアヤセは、
別々に、ニューハウンの町から出ることにした。
「じゃあね、総司君。元気でね」
と、僕を見送るアヤセが、手を振る。
「アヤセさんも、お元気で」
と、一礼した僕は、一人、
第六天魔王を倒すために、都へと旅立った。




