第29話 宿命の戦い〈破〉
ガギイィィーン!
けたたましい金属音が、薄暗い地下室に響いた。
「その程度の腕だったか、沖田君」
芹沢鴨は、僕の放った抜刀の一撃を、
アッサリと刀で受け止める。それでも僕は、
「まだ、これからだ、芹沢!」
と、二撃目の太刀を、
ブオォン。
上段から振り下ろした。だが、その斬撃も、
ガギィン。
芹沢は刀で受け、さらに物凄い力で、
ドカンッ。
僕を弾き飛ばす。さすがに強い。しかし、
「今の僕は『伝説の剣士』だ!」
「何だ、それは?」
芹沢が嘲るように笑い、
「どりゃあーッ!」
反撃の一撃を、大上段から振り下ろした。
ゴオオォォォーッ!
突風のような剛の剣。
ガチゴオーン。
かろうじて刀で受け止めた僕だが、
「さ、さすがは、芹沢鴨」
凄まじい威力に『戦慄』を覚える。
「弱くなったな、沖田君。修練を怠ったのか」
その芹沢の言葉を聞いたアヤセが、
「あ、あれで、弱くなったの?」
と、驚きの声を漏らす。
「沖田君、本来の強さを取り戻せ」
「確かに僕は、鈍っていたかな」
「そうだ。君は、この芹沢鴨を殺した男だ!」
薄暗い地下室で対峙した僕と芹沢は、
野獣のような本性を剥き出して、睨み合った。
その戦いを見物しているロキは、
「ほう、これは面白い」
相変わらず、豪華な椅子に座して、
葉巻を咥えながら、アヤセを抱き寄せて、
「さあ、こっちへ来い」
グイッと、膝の上に座らせる。そしてロキは、
「アヤセ、よく見ろ、猛獣同士の殺し合いだ」
と、楽しそうな声を発する。
僕は、その方をチラリと見て、言葉を漏らした。
「あの野郎、人の戦いを観戦しやがって」
「よそ見をするな、沖田君、斬り殺すぞ」
芹沢は爛々と輝く眼で、僕を凝視ている。
それは野獣の目だ。人の目ではない。
この時、僕は恐怖より、胸の高鳴りを感じた。
命を賭けて戦う。それこそが剣士の本懐だ。
「そろそろ、決着を付けようか、沖田君」
「では芹沢先生、よろしくお願いします」
強敵の芹沢を倒す業は、
やはり、三段突きしかない。
僕は静かに呼吸を整えながら、
間合いを、半歩から一歩、慎重に詰めた。
「沖田君、そうだ。それで良い。その眼光だ」
と、芹沢は、なぜか嬉々として、
しかし、全身からは凄まじい殺気発していた。




