第21話 港町ニューハウン
アヴァロン島から追放されてから、三日間、
僕とアヤセは小舟で大海を漂流していた。
この状況に、自称強運のアヤセも、
「私たち、このまま死んでしまうのかしら」
などと、弱気の発言する。
僕は波打つ海面を眺めながら、
内心、心細くなりなからも、
「大丈夫、諦めたら、人生終了ですよ」
と、口先だけでも、前向きな発言をした。だが、
その直後、運良く漁船に救助され、
僕とアヤセはニューハウンの港にたどり着く。
僕は助けてくれた漁師・トールに、
「ありがとう、ございました」
ペコリと頭を下げた。
その傍らでアヤセも、深々と頭を下げる。
「本当に、あなたは命の恩人です」
この辺りは、まだ、
第六天魔王の支配地域ではないようだ。
「しかし綺麗な街並みね」
と、アヤセが言う通り、港町の家々は、
とんがった屋根に、
黄色や桃色のカラフルな外壁で、
「まるでメルヘンの世界のようだわ」
そして、その町を歩きながらトールは、
さらに親切なことに、
「君たち、行く当てもないのだろう」
と言い、彼の家に泊まることを勧めてくれた。
「オレは独身なんだが」
トールの話によると、
彼の両親は数年前の流行病でなくなり、
「弟は料理人で、去年、店を出した」
という、ことらしい。だから、
「今は、わりと広い家に一人暮らしなんだ」
結局、僕とアヤセはトールの親切に甘えて、
彼の家に宿泊することにした。
そして、夕食は、トールの弟のレストランで、
「珍しく大漁だったんだ。今夜はオレが奢るよ」
と、トールは上機嫌で、ご馳走してくれる。
料理は港町らしく、
魚料とカニやエビの豪華なシーフードだった。
「さあ、遠慮せずに食べてくれ」
その後、真夜中、
僕はトール家の一室で眠っていたのだが、
「何から何まで、親切にしてくれて、ありがとう」
「いや、オレは、そんなつもりで」
隣の部屋から、
ヒソヒソと話す声が聴こえてきた。
「いいのよ。私はトールさんのことが」
「でも、人の弱みに付け込んだみたいだな」
「そんなことはないわ。私が気に入らないの?」
「そんなことはない。君は美人だ」
こうして隣の部屋では、トールとアヤセが、
わりと大きめの声で『情事の声』を漏らし、
僕は聴いてはいけないものを聴いてしまう。




