第18話 海辺に立つガウェイン卿
アーサー王子が昇天した翌日、
アヴァロン島の海辺に一人の男が立ち、
「悔い改めよ」
と、島の人々を集めて説法を始めた。その男は、
ガウェイン卿とう貴族で、
先々代の国王の外孫であるらしい。
このガウェイン卿は、
「この世界は人の意識が創る幻である」
そう人々に説いて、さらに、こうも語った。
「故に人の心が清ければ、清い世界が現れる」
それから数日が経つと、聴衆は増え、
千人を超える人が海岸に集結するようになる。
「悔い改めよ。人の意識が変われば世界も変わる」
その後、ガウェインの言葉に感化され、
彼を崇拝する島民は数を増してるようだ。
この事態に、王室の若き大臣・モルドレッドは、
「ガウェインは王位を狙っているのです」
と、国王に進言して、
ガウェイン卿を抹殺する計画を立案した。
そして僕に、こう依頼してくる。
「ですので、ガウェインを殺してくれませんか」
だが、当然、僕は断った。
「僕は伝説の剣士です。そんなことはしませんよ」
「そこを、何とか、お願いできませんか」
「どんなに頼まれても、暗殺なんてしません」
僕は、この異世界に転移する前は、
幕末の京都で新選組の一番隊長として、
数々の暗殺も実行した。しかし、それは、
不本意な仕事でもあったのだ。
「今の僕は『新たなる希望』のために戦うのです」
「ですが、当方には交換条件が有りますよ」
と、モルドレッドは不敵な笑みを見せる。
「交換条件?」
「あなたの、お連れ様、アヤセさんですが」
「えっ、アヤセが、どうしたのですか?」
突然、アヤセの名前を出されて、僕は動揺する。
それを見透かしたようにモルドレッドは、
狡猾な表情を見せて、言葉を発した。
「彼女は窃盗団の一員です」
「ま、まさか」
「証拠は有ります。我々は彼女を捕らえました」
まさか、アヤセが窃盗団の一員だったとは。
僕は狼狽した声で、
「そ、それで交換条件とは?」
と、モルドレッドに問う。
その問いに、彼は無機質な声で応えた。
「暗殺の仕事を受ければ、彼女を解放します」
「もし、僕が暗殺を拒否すればどうするのですか」
「即刻、アヤセを処刑するだけですよ」
そう言ったモルドレッドの目は、冷たく冷酷だ。
「これが交換条件です。受けてくれますね」
モルドレッドは歳は若いが、
さすがに王室の大臣だけはあって、
清濁併せ呑む、交渉事の玄人であった。
それに対して僕は、
「わ、分かりました。お受けします」
一介の戦闘員に過ぎないのだろう。




