第16話 帆船カティーサーク号
僕はロカ岬の近郊の港から、
帆船カティーサーク号に乗って都を目指した。
そして、その船内で、
美しい女性から声をかけられる。
「その腰の刀、あなたは騎士なの?」
「騎士というか、あの侍ですね」
「サムライ?」
「実は僕、異世界から転移してきたのですよ」
「そうなのね。私はアヤセ。仕事は女優よ」
「僕は沖田総司です」
彼女は洋装の赤いドレスを着て、
一見、幼く見えるが、僕より少し年上のようだ。
「よろしくね。総司君」
「こちらこそ」
その時、帆船から見る海原に、
巨大な首の長い生き物が見えた。
「あ、あれは?」
驚く僕に、アヤセは微笑みながら教えてくれる。
「首長竜よ、始めてみたのね」
こうして僕とアヤセは親しくなったのだが、
しかし、航海の途中、嵐に巻き込まれ、
カティーサーク号はアヴァロン島に漂着した。
この嵐で船体は、かなり損傷したようで、
「申し訳ございません。修理には時間が必要です」
と、船長は乗客に説明する。
僕たちは仕方がなく、アヴァロン島に下船した。
「このアヴァロン島は、リンゴ農園の島よ」
「どうりで良い香りが漂っていますね」
そんな会話をしながら、アヤセと僕は島を歩く。
「それはそうと僕たちは、今後、どうすれば?」
「とりあえず今日はホテルを探しましょう」
その後、二人は他の乗客と共に、
アヴァロン島のホテルに向かったのだが、
この島にあるホテルは一軒だけで、
「乗客の全員を収容することはできないようね」
「満室なら僕は野宿をします」
「そんなことは言わず、私と相部屋にしましょう」
と、アヤセは言った。だが、当然、僕は断る。
「そんなことは、できませんよ」
「夫婦ということにすれば、いいのよ」
アヤセはニコリと笑顔を見せながら、
「あなたの名前はランスロットにするわよ」
そう言って宿帳に記載した。
こうして結局、僕とアヤセは、
同じ部屋に泊まることになるのだが、
「まいったな」
「そんなに困らないでよ、ハンサムさん」
「でも、夫婦だなんて」
「私のことオバサンだと思っているのね」
「そんなこと、ありませんよ」
部屋のなかで、そんな会話をしていると、
アヤセは、おもむろに赤いドレスを脱ぎ始める。
「な、なんですか急に」
「あら、お風呂に入るのよ」
「でも、僕の目の前で脱がなくても」
「私は女優よ。裸になるのは恥ずかしくないわ」
そう言いながらアヤセは、
ドレスと同色の真っ赤な下着も脱ぎ、
全裸になって、妖艶な笑みを見せた。
「一緒に入る?」
「いえ、入りませんよ」
と、僕は当惑して視線を外す。
さて、これも異世界の、
旅路の『波乱万丈』というものなのだろうか?




