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第11話 手塚郷の黒十一斎

 僕と三休狂雲、それに鈴花は、

 深手を負った時次郎を連れて、

 宿場町・手塚宿に、たどり着いた。

 しかし、そこで、


「何、あれ?」


 鈴花が思わず、悲鳴のような声を上げる。

 一人の男が四体の死体を木に吊るしていたのだ。

 その男は僕たちに気付き、こう言った。


「この遺体は鍛冶屋の家族です」


 吊るされた死体は、鍛冶屋夫婦と、

 その息子と娘なのだろう。


「この鍛冶屋は第六天魔王の代官に逆らって」


 一家は皆殺しにされたらしい。そして、

 見せしめのために、


「この木に吊るすよう、私が命じられたのです」


 男は、そう言うと下を向いて、

 僕たちから視線を外した。だが、ここで、

 三休が男に向かって、

 

「我々は名医の黒十一斎先生を尋ねてきました」


 と、言うと、

 男は三休の顔に視線を戻して、応えた。


「私が黒十一斎です」


 こうして僕たちは、

 黒十一斎の診療所兼自宅に案内されて、

 時次郎は治療を受ける。


「これは、かなり深い傷ですね」


 そう言いながら、

 黒十一斎は時次郎の傷を縫合した。

 だが、その時だ。


「おい、ここに旅の者が来ているだろう」


 この手塚宿を支配する代官が、

 四人の手下を連れて、踏み込んでくる。しかし、

 この時、代官の顔を見た鈴花は、


「あっ、丈一兄さん」


 と、驚愕の表情で声を発した。


「なんだ、鈴花か、久し振りじゃないか」

「丈一兄さん、こんな所で何をしているの?」

「俺が村を飛び出して十年以上が経っているな」


 丈一は、そう言ってから、こう言葉を続ける。


「今では第六天魔王様の代官にまで出世したよ」

「だけど丈一兄さん、鍛冶屋さんに酷いことを」

「仕方がないのさ、支配には恐怖が必要なんだ」


 久々に再会した兄妹が、

 そんな会話をしている最中に、手下の一人が、


「お大官様、それより早く、伝説の剣士を」


 と、話に割り込むと、丈一は僕の方を見て、


「そうだったな。俺は、お前を殺す」


 そう言いながら、剣を抜いた。


「止めて、丈一兄さん」

「これも仕方がない。第六天魔王様の命令だ」

「この沖田さんは、あたしを助けてくれた人よ」


 鈴花は必死に兄の丈一を止めようとしていたが、

 無駄だろう。


「表に出よう。ここは診療所だ」


 僕は刀を手に立ち上がった。

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