第10話 近藤勇と長曽祢虎徹
第六天魔王の騎馬隊が去った後、三休狂雲は、
時次郎の背中の傷に包帯を巻き、手当てしたが、
「かなりの深手だな」
そう言って、時次郎の治療のために、
名医がいるという宿場町に向うことにした。
「すいません、私のために」
時次郎は頭を下げたが、
「命を救われたのは我々の方です」
と、三休は言い、
何とか自力で歩ける時次郎を連れて、僕と、
三休と鈴花は宿場町へ向かい歩く。
その道中、刀を折られた僕は、
「何処かに良い刀鍛冶はいませんかね」
そう三休に尋ねたが、彼は、こう応えた。
「菊一文字を超える名刀を作るのは難しいな」
やがて、日が暮れて、
「今夜は野宿するしかない」
と、三休は適当な場所を探す。だが、
鈴花は異を唱えた。
「えっ、あたしは女の子よ。野宿なんて、嫌よ」
「だから楽しい旅ではないと言ったのだ」
三休は、鈴花を諭すように言いながら、
ゴザを引いて寝転んだ。夜空を見上げると、
満天の星空で、僕は、
「あっ」
大きな流れ星を見て、思わず声を漏らす。
しかし流れ星は、
グオオォォォーン。
こちらに向かって来るようだ。そして、
「えッ!」
驚く僕の目の前に、
ドゴォォーン!
流れ星は、落ちた。
「キャア、なに!」
悲鳴をあげる鈴花。次の瞬間、
僕は地面に激突した流れ星を見て驚愕する。
「こ、近藤サン?」
それは新選組局長・近藤勇の頭部だった。
これを見た時次郎も驚き、
「ま、まさか、生首とは」
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
と、三休は経を唱える。
その近藤勇の生首の目が、ギョロリと動き、
僕を見た。
「総司、久し振りだな」
と、言葉を発する。
さらに生首は苦笑いしながら言葉を続けた。
「官軍に捕まり、斬首され、晒し首にされた」
「こ、近藤サン。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねえよ、見りゃわかるだろう」
「た、確かに、そうですね」
「まあ、それより総司、刀を折られたのだろう」
「ええ、しかし」
「俺の虎徹を、お前にやるよ」
そう言った生首の視線の先には、
地面に突き刺さった一振りの刀がある。
それは近藤勇の愛刀『長曽祢・虎徹』だ。
「俺は冥府に行く、さらばだ」
そして生首は火球と化して夜空へと飛び去った。




