第21話 新しい風の始まり
リヴィエラの街を包む風は、今日も穏やかだった。
けれど、ルークの心にはもう“旅立ちの風”が吹いていた。
「ほんとに行くのね」
リリアスが微笑む。その背後では、修復された風の塔が静かに光っている。
「うん。ほかの街にも、困ってる人や精霊がいるかもしれないし」
「お前らしいな」
ガルドが荷物を担ぎながら、にやりと笑う。
『ねぇねぇ、ルーク! 次の街ってどんなところ?』
フィーネが尾を揺らす。
「南の方に、“湖の都アルメリア”っていうところがあるらしいよ」
『きれいそう! ピューイも行こう!』
ピューイが“ピュイッ”と元気に鳴いた。
リリアスがルークに手渡したのは、一枚の銀色の札だった。
「これは、あなたの冒険者証。
各地のギルドで共通に使える“身分証”でもあるの。
どこへ行っても、あなたはもう立派な冒険者よ」
「ありがとう……大切にする」
札には“ルーク・テイマー”の名が刻まれていた。
それを見つめながら、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「……名前があるって、こんなに嬉しいんだね」
ガルドが優しく頭を撫でた。
「あのときは“名無し”だったもんな。
これからは“ルーク”として、堂々と歩け」
ルークはうなずいた。
フィーネとピューイがその肩に乗る。
「行こう、ガルド!」
「ああ。――新しい風を探しにな」
風が二人の背を押す。
リヴィエラの街を離れ、道の先に広がる新しい世界へ。
こうして――
少年ルークとガルドの、新たな冒険の旅が始まった。




