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第19話 風の塔の呼び声


夜のリヴィエラは、昼の喧騒が嘘のように静かだった。

窓の外では、風の塔が淡く光り、遠くで鐘が鳴っている。


ルークはベッドの上で寝返りを打った。

眠れない。胸の奥が、少しだけざわざわしている。


「……明日、ほんとに試練、受けるんだ」


『不安?』


枕元のフィーネが、くるりと丸まりながら問いかける。


「ちょっとだけ。でも……怖くはないよ」


その言葉に、窓の外から“ピュイ”という小さな声が聞こえた。


「ピューイ!」


小鳥が窓枠にとまり、首をかしげる。

月明かりを受けた羽が、淡く青白く輝いていた。


『また来たんだね。ほんとにルークが好きなんだ』


「うん……あの子にも、ちゃんと名前をつけなきゃね」


ルークはそっと窓辺に手を伸ばす。


「ピュイって鳴くから……ピューイ、にしよう。いい?」


小鳥は“ピュイッ”と元気に鳴いた。


『ふふ、気に入ったみたい!』


「これからも、一緒にいようね。ピューイ」


ピューイは羽を小さく広げ、ルークの指先をくちばしでつついた。

その温もりが、胸に沁みる。


「フィーネ、ピューイ、明日はきっと……がんばるよ」


『うん。ルークなら絶対大丈夫。だって――風が味方してるもん』


ピューイがふわりと羽ばたき、窓の外の夜風へ溶けていく。

その後ろ姿に、ルークは微かに“声”を聞いた気がした。


――たすけて。


風の流れの奥、どこか遠くから届くかすかな囁き。


「……今の、誰かの声?」


『うん。たぶん――風の精霊の。』


フィーネが静かに答える。


「助けを、呼んでるんだね」


『うん。だからルークが選ばれたんだよ』


ルークは窓を閉じ、夜空を見上げた。


月の光が彼の瞳に映る。


「……行こう、明日。風の塔へ」


その決意を見届けるように、

外の風がやさしく部屋の中へと吹き込んだ。

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