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第15話 風の都リヴィエラへ


青い空の下、馬車の車輪が石の道を刻む。


「ねぇガルド、あとどのくらいで着くの?」


「そうだな……昼過ぎには街が見える。だが油断すんなよ。街道にも盗賊が出る」


「とうぞく……?」


『怖い人たちだよ。欲しいものを奪おうとする人間。』


ルークは無意識に胸の前で手を握りしめた。

「……怖いけど、逃げたくない」


ガルドがにやりと笑う。

「その根性があれば十分だ」


馬車が丘を越えた瞬間、目の前に広がる光景にルークは息をのんだ。


「……わぁ……!」


遠くに、風の帆塔がいくつも立ち並び、白い石造りの街が光を反射している。

雲の合間を抜ける風が街全体を包み、まるで生きているようだった。


「あれが……リヴィエラ?」


「ああ。風の都――冒険者の集まる街だ」


ルークの胸が高鳴る。

フィーネが風に揺れながら言った。

『ねぇルーク、風が笑ってるよ』


「うん、ぼくにも聞こえる」


街の門をくぐると、人の声と香ばしい匂いが溢れていた。

屋台のパン、香草の匂い、笑い声、そして金属が打たれる音。


「すごい……こんなにたくさんの人……!」


「これが街ってやつだ。お前の故郷とはまるで違うだろ」


「うん。生きてるみたい」


フィーネが肩の上で鼻をひくつかせる。

『……でも、風の流れが少しおかしい。』


「おかしい?」


『優しい風と、冷たい風が混じってる。どこかで“精霊”が苦しんでるかも』


そのとき、前方から透き通る声がした。


「……ガルド?」


振り向くと、一人の女性が立っていた。

金色の髪を束ね、白銀の胸甲を身につけた女性――

その瞳はまっすぐで、どこか懐かしさを感じる。


「……リリアス!」


ガルドの声がわずかに震えた。


「本当に、生きてたのね」


「お前もな」


二人は短く笑い合った。


リリアスの視線が、ルークに向く。


「その子が……噂の少年?」


ルークは思わず一歩引いた。

けれど、リリアスの瞳は優しく微笑んでいた。


「ようこそ、リヴィエラへ。――森に選ばれしテイマーくん」


フィーネが風の中で尾を揺らし、ルークの胸が高鳴った。


新しい世界の風が、確かに吹いていた。

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