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第13話 光の少年の噂


「……ルーク、少し出てみろ」


翌朝、ガルドに呼ばれて外へ出ると、

村の道には見知らぬ人々が集まっていた。


「この牧場か?」「あの子がそうだって?」


ざわめきの中心で、村の子どもたちがこちらを見ていた。


「あっ、あの子だ! 森を光らせた子!」


「えっ……ぼ、ぼく!?」


困惑するルークの肩に、フィーネが飛び乗る。

『落ち着いて、ルーク。怖くないよ』


村人の一人――教会の神父が近づいてきた。


「君が……森を救ったという少年か?」


「ぼくは……ただ、少し光っただけで」


神父は優しく笑んだ。

「光がどうであれ、森は癒やされた。神の導きかもしれない」


ガルドが一歩前に出て、軽く頭を下げた。

「すみません。子どもが騒ぎの中心になっちまって」


「いや、責めるつもりはない。

ただ、あの森にはまだ“闇”が残っている。

この子の力が本物なら――どうか教会へ来てほしい」


神父はそう言い残して去っていった。

その背中を見送りながら、ルークは胸の奥がざわめくのを感じた。


「……ガルド、ぼく、どうすればいいの?」


「焦んな。お前の力はまだ形になっちゃいねぇ。

だが、もう村の外の奴らも動き出してる」


「外の……?」


「ああ、“光の少年”の噂は、きっと王都まで届く。

力を利用しようとする奴も出てくるかもしれねぇ」


フィーネが耳を伏せる。

『ルークを狙う人……出てくるの?』


「まだわかんない。でも――」

ガルドがまっすぐルークを見た。


「そのときに備えよう。ルーク、お前を守るためにも、

俺たちは“動く”」


「動く……って?」


「この村を出る。

森を抜けて、“西の街”へ向かう。

そこに、昔の仲間がいる。お前に教えをくれるかもしれん」


ルークの胸がどくんと鳴った。


初めての旅。

不安よりも――小さな希望が勝っていた。


「……行きたい。もっと知りたいんだ、この力のこと」


ガルドはにやりと笑う。

「言うと思ったぜ」


フィーネが嬉しそうに尻尾を振った。

『じゃあ決まりだね! 新しい風の始まり!』


牧場の外では、朝日が木々を照らしていた。

光に包まれながら、ルークはそっと空を見上げる。


それは、少年が“冒険者”として歩き始める最初の朝だった。

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