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第4話 初侵入──腕輪と死に戻りの真実

「……ここが依頼にあった新しいダンジョンね」


分厚い盾を持った戦士の女が洞窟を前に立ち止まった。

名はエレナ・グランフォード。体格も胸板も厚く、迫力満点のタンクだ。

後ろには小柄な魔法使い、リサ・アルベリーニ。杖を握り、勝ち気な瞳を光らせている。

そして、僧侶のマリア・カンデラ。おっとりとした笑顔で二人を包み込むように見守っていた。


三人が入口を跨いだ瞬間、淡い光が手首に集まり──

銀色の腕輪が、まるで生えるように装着された。


「な、なにこれ!?」

リサが驚いて腕を振る。だが外れない。

エレナは眉をひそめつつも、「害はなさそうだ」と落ち着いている。

マリアはそっと触れ、「……不思議。暖かいですね」と微笑んだ。


---【Zavixログ】

[10:01] 新規エージェント登録

ItemKey: agent.warrior[c2d8f1a4]

UUID: c2d8f1a4-92ab-4baf-845a-1f2c22dbf1c9

登録名: エレナ・グランフォード

ステータス: 体力85/攻撃15/防御22

役割: タンク


ItemKey: agent.mage[4b3de921]

UUID: 4b3de921-8811-46db-9a1d-3f12fbeef091

登録名: リサ・アルベリーニ

ステータス: 体力40/攻撃28/防御8

役割: 火力


ItemKey: agent.cleric[8fa0d770]

UUID: 8fa0d770-bf32-4f01-9633-3f02edbe1982

登録名: マリア・カンデラ

ステータス: 体力55/攻撃10/防御12

役割: バッファー/ヒーラー

---


俺は管理者モードでその様子を見ていた。

侵入と同時にZavixエージェントで監視対象化。しかも蘇生トラップ自動適用、か。


セラフィーナが囁く。

「はい。彼女たちは死ぬ直前までの記憶を持って復活できます。ですが、その異常性に気づいたとき、恐怖と依存の狭間で揺れるでしょう」



通路は湿り気を帯び、冷気が肌に張り付く。

三人は足音を殺し、壁の苔を確かめ、足場を杖で突き、慎重に進んだ。

エレナは一定間隔でチョーク印を残し、マリアは小声で加護を唱える。

リサは光の魔法で視界を確保しつつ、時折そわそわと先を照らした。


---【Zavixログ】

[10:12] 通路A-3で低頻度出現イベント検知(密度: low)

ItemKey: monster.slime[a3f1c9b2]

UUID: a3f1c9b2-77e3-4a1b-9c7f-91c8d3d2b4e1

判定: 通常個体(閾値逸脱なし)

---


ぷるぷると震えるスライムが道を塞いだ。

エレナが前に出て盾を構える。酸がジュッと音を立て、表面を焼く。

散った酸がエレナの眉を焦がす。

リサの炎弾が飛び、スライムを蒸発させた。

マリアが加護を重ね、盾の損耗を抑える光を流し込む。


---【Zavixログ】

[10:18] 通路A-5でスポーンイベント

ItemKey: monster.goblin[5f0a3c77]

UUID: 5f0a3c77-0b7a-4c4e-9f7f-2a9f40c2f6d3

武装: こん棒

判定: 通常個体

---


よだれを垂らし、こん棒を振り上げるゴブリンが一匹。

エレナが盾で受け止め、腕を弾く。

「はいはい、燃えちゃいなさい!」

リサの炎が走り、ゴブリンは崩れ落ちた。


道はゆるく曲がり、天井は低くなる。

骨の音がどこかでガシャリ、と鳴った。


---【Zavixログ】

[10:27] 通路A-8でスポーンイベント

ItemKey: monster.skeleton[9b21e0aa]

UUID: 9b21e0aa-5d6e-44d1-8c82-5e1b7f7f0a51

武装: 錆びた剣

判定: 通常個体

---


スケルトンの横薙ぎをエレナが受け流し、

リサが関節へ炎弾を撃ち込み、スケルトンはあっけなく分解した。


俺はダッシュボードで“発生率”のグラフを横目に見る。

まだ“監視中”だが、侵入とともにスポーン周期がわずかに早まっている。

……ユーザーアクセスに合わせて供給が上がる、か。素直な作りだ。



通路の風向きが変わった。

右壁の奥に、細い横穴が口を開けている。

リサが光を差し込むと、古びた宝箱が一つ、ぽつんと佇んでいた。


「ほら見て!宝箱よ!レアアイテムに違いないわ!」

彼女は仲間の制止を聞かず、身をかがめて横穴へ滑り込む。


「待て、罠確認が先だ!」エレナが低く声を上げたが──


---【Zavixログ】

[10:41] サブエリアA-8b(横穴)で疑似オブジェクト検知

ItemKey: monster.mimic[77c4e1d9]

UUID: 77c4e1d9-3a1d-4b3c-9d77-144b2a8e5e2f

擬態: 宝箱

トリガ: ENCOUNTER

---


宝箱の蓋がガバッと開き、鋭い牙が連なった。ミミックだ。

「きゃあっ!!」

細い悲鳴。リサの身体が一息に呑み込まれる。


---【Zavixログ】

[10:42] agent.mage[4b3de921] 死亡 → 復活トラップ発動

復活地点: 同行者付近

記憶保持: true

---


眩い光が横穴の手前で弾け、リサはエレナとマリアのすぐ傍に再生した。

杖を抱え、顔は真っ青のまま震えている。


「わ、私……食べられたのに……いま戻って……覚えてる……」

マリアが肩を支え、「落ち着いて。深呼吸を」と囁く。

エレナは横穴を睨みつけ、「ここは撤退だ。ギルドに報告する」と短く告げた。


三人は印を辿りながら、来た道を確実に戻っていく。

モンスターの追従は薄い。だが“ここが普通ではない”ことだけは、全員の胸に刻まれた。


---【Zavixログ】

[10:47] 外部パーティ、撤退開始 → ギルド報告ルート予測

発生率トレンド: 低→中(アクセス影響)

---


「ようやく異常性に気づいたか」

俺は管理者モードのまま、彼女たちの退路を見送った。

ログの末尾に“報告”の予測が静かに並ぶ。次のインシデントは、外の世界で始まるだろう。


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