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第3話 初インシデント対応──スライム収束手順

通路に出現したスライムを前に、俺は深呼吸した。

アラートは赤々と点滅し続けている。


だが、慌てる必要はない。

まずはログだ。俺は《監視魔法 Zavix》のダッシュボードを開いた。


---【Zavixログ】

[09:14] 通路1にスライム出現。

ItemKey: monster.slime[a3f1c9b2]

UUID: a3f1c9b2-77e3-4a1b-9c7f-91c8d3d2b4e1

Tags: species=slime, zone=通路1, threat=low

AvgStats: 体力12/攻撃2/速度1

判定: 通常個体(閾値逸脱なし)

---


「……通常発生、か」


セラフィーナが聖母のような微笑みを浮かべ、頷いた。

「ええ。この子はイレギュラーではありません。ですから即座に排除する必要はないのです」


「つまり、生かしておく……ってことか」


「はい。ただし弱体化処置を“予約”しておくのです。冒険者と邂逅した瞬間に発動して、体力が削られます」


---【Zavixリソース】

ItemKey: monster.slime[a3f1c9b2](MID: a3f1c9b2)

体力: 12(8) # 邂逅時に自動で8へ弱体化

状態: observed(予約済)

---


「なるほど……普段は体力12のままだけど、冒険者に遭遇した瞬間にトリガ《ENCOUNTER》が走って、自動的に8へ落ちる、ってことか」


「そうです。予約は個体側に記録され、邂逅で発動します」


《インシデント対応予約完了》


ログに収束マークが付いた瞬間、胸の奥に不思議な達成感が湧いた。

……俺、まさか異世界でまでインシデント対応をやってるとはな。



しばらくして、俺は「モード切り替え」のメニューに気づいた。


- 管理者モード(Godモード)

- 一般ユーザーモード


「……これ、自分で切り替えられるのか?」


確認しようと触れた瞬間、視界が一変した。

気づけば、俺は一般ユーザーモードに入っていた。


「おいおい……戻す操作は……できないのか!?」


その瞬間、スライムがこちらに反応。ぷるぷると這い寄ってくる。

管理者モードでは認識されなかったはずなのに、今は完全にロックオンされている。


「……まさか、戻れない!?」


次の瞬間、スライムの酸を浴び、俺の身体は一瞬で溶かされた。

視界が真っ暗になり、冷たさと痛みが一気に押し寄せ──


---【Zavixログ】

《致命打検知》

あなたは死亡しました

復活トラップ発動 → 管理者モードで復活(記憶保持)

---


気づけば、再び俺はダンジョンの入口に立っていた。

胸を押さえると、身体は何事もなかったかのように元通り。


「……死んだら強制的に管理者モードに戻る、ってわけか」


セラフィーナが聖母の慈愛を込めて微笑む。

「はい。ご安心を。あなたは決して失われません。ただし、“死”を経験する覚悟だけは必要ですが」


……いや、安心できるかよ。



俺がダンジョン内でスライムに殺されているころ。

近隣の村人が、このダンジョンを発見してギルドに報告した。

「突然村の傍に洞窟が現れた」と。


ギルドは即座に調査を決定。

派遣されたのは──女性冒険者3人組。


ダンジョン内に姿を現した瞬間、俺は管理者モードで彼女たちを見下ろしていた。


「……でけぇ」

最初に目を引いたのは戦士。分厚い盾を持ち、体格も胸板も迫力満点。まさに“壁”って感じだ。


その横で腕を組み、偉そうに顎を上げているのは魔法使い。小柄で勝ち気、目つきの鋭さが炎そのものだ。

「なんだこいつ、めちゃくちゃ生意気そうだな……」と俺は思わず呟いた。


最後に僧侶。おっとりとした笑顔を浮かべ、二人を優しく見守っている。ほんわかした雰囲気だが、癒しと支援の要らしい。

「……なるほど、典型的な三人組ってやつか」


「……いいね、三者三様。テストするのにちょうどいい」

俺は管理者モードのまま、三人の動線とゾーンのトリガ条件を重ねて確認した。


初めての“外部アクセス”。

果たして、どんなインシデントが待ち構えているのか。


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