第2話 監視魔法 Zavix、ダンジョンに初期導入
「スキルも付与できましたし、それでは早速転生しましょう。」
光りに包まれたかと思ったら、俺はダンジョンの入口に立っていた。
黒々と口を開ける洞窟。吹き出す冷気。背筋がゾワッとする。
いや、ダンジョンってもっとワクワクするものじゃないのか?
目の前にあるのは、完全に「データセンターの地下フロア」の不気味さだ。
「ここが、あなたが管理するダンジョンです」
横に立つ女神セラフィーナが告げた。
その微笑みだけが、この陰鬱な場所にやけに場違いで……逆に心が落ち着く。
> 《監視魔法 Zavix 初期化を開始します》
突然、空間に浮かぶ魔法陣が光り、見慣れたインターフェースが目の前に展開された。
グラフ、リソースメーター、ログ画面……いやいやいや、どう見ても監視システムのダッシュボードだろこれ。
「セラフィーナさん!これ……完全に運用監視ツールじゃないですか!?」
「ええ。愛するものを見守るのに、これ以上ふさわしい力はありませんから♡」
……母性的な微笑みを浮かべながら言うな!
俺の目の前に「ダンジョンリソース状況」という表示が浮かび上がる。
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【Zavixダッシュボード】
魔力供給量:78%
罠耐久度:65%
通路安定度:92%
モンスター発生率:監視中
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「……モンスター発生率が“監視中”ってどういうことだ?」
「このダンジョンは、まだ生成されたばかり。十分なデータが蓄積されていないのです。
発生率を正確に算出するには、しばらく監視し、記録を集める必要があります。」
セラフィーナが柔らかく微笑む。
「ですから、最初のうちはアラートが鳴るたびに、あなた自身の経験も合わせて記録していくのです。
ほら、まるで赤ちゃんの成長を見守るように……ね♡」
「……いや、異世界に来ても結局ログ取りからかよ!」
俺は頭を抱えた。
なるほど。これは単なるチートじゃない。俺が散々使わされた、あの監視ツールにそっくりだ。
だが、今度はサーバじゃなくダンジョンを監視する。
なんだこの妙な安心感は……。
「では、試しにログを開いてみましょう。」
セラフィーナが俺の手を取ると、空中に光の文字が流れた。
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【Zavixログ】
[09:12] 魔力供給ライン、正常。
[09:13] 通路に異常なし。
[09:14] ……ピコン! 新規イベント発生。
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「イベント発生って……おいおい、早速かよ!」
目の前の魔法陣が赤く点滅し、アラート音が鳴り響く。
俺の背筋がゾクリとした。
> 《アラート:E001 スライムが通路1に出現しました》
「スライム!?」
思わず叫んだ俺に、セラフィーナがにっこりと頷く。
「はい、最初の監視対象です。愛情を持って、適切に対処しましょうね。」
……愛情って言い方やめろ!
だが、アラートが鳴った以上、無視はできない。
ここで行動しなければ、ダンジョンマスター失格だろう。
俺は深呼吸し、Zavixのログをもう一度確認した。
──そうか、まずは「状態確認」だ。
「……って、異世界でまでインシデント対応するのかよ!?」
こうして俺の二度目の人生、最初のインシデント対応が幕を開けたのだった。




