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6話 お言葉に甘えてお世話になります、ちびもふと一緒に

 俺はカーライルさん達に、俺の話しをした。細かくではなく大雑把に。地球のことや異世界転移したかもしれないことを話しても、混乱させて、また注意人物と思われたくなかったからだ。


 気づいたらこの森にいた事。自分に何が起こったのか分からないまま、ずっと同じ場所にいるわけにもいかず。とりあえず人のいる場所へ出られるよう、人のいる場所じゃなくとも、水を確保できる場所を探して、森の中を彷徨っていた事。


 そうしてようやく湖に辿り着き、休もうと思ったが。そこであの、見たことがない大型のトラ似の生き物。カーライルさん達が、サンダーファングタイガーと呼んでいた生き物に襲われた事。などを簡単に話し、それの全てを記憶喪失で通した。


 別に地球のこと以外、ここの事を全く知らないのは本当の事だし。記憶喪失と言っておけば、俺がここの事も、生き物の事も知らなくても、別に変じゃないだろう?


「まさか……、記憶喪失だと?」


「はい、覚えているのは自分の名前と、この荷物が自分の物ってことだけで。後のことは何にも分からないんです」


「はあぁぁぁ、ちょっと待ってくれ、話しを整理したい。そうだな、これでも食べて待っていてくれ」


 そう言ってカーライルさんが、カバンから出してきたのは、今度はおにぎりだった。まさかのおにぎりに、俺は返事をした後、おにぎりを受け取り、すぐにかぶりついた。

 うん、うん、間違いなくおにぎりだ。美味しい。こんなに美味しいと思ったおにぎりは何年ぶりだろう。


 俺はおにぎりを堪能し感激しながら、カーライルさん達の方を見る。こそこそと話しているが、おそらく俺が本当に記憶喪失なのか、危険人物じゃないのか。俺の話したことについて、話し合っているんだろう。


「おい、何か感じるものは?」


『いや、リョウが嘘を付いているような感覚はしない。まぁ、ちょっと不思議な感覚はしているが、嘘はついていないだろう』


「お前は勘が鋭くて、こう言う人の嘘を見抜くのが得意だからな。記憶喪失については本当だと言うことか。だが、不思議な感覚ってのは何だ?」


『うむ、それが俺にも分からんのだ。だが、これも別に悪い感じはしないから、問題はないだろう。それと彷徨っていたと言うのも本当だぞ。ジグザクとあっちへ行ったり、そっちへ行ったりしている、知らない気配が森にあるなと思っていたが。リョウと接触して確信した。あの変な動きをしていたのはリョウだったのだ』


「お前が警戒していた気配か」


『ああ。どこへ行けば良いかわからず、あっちへこっちへ歩いたんだろうな。だが少しジグザグに歩いたものの、遠回りせずにここに着く事ができた。サンダーファングタイガーにさえ合わなければ、完璧だったろう。俺達の家にも近いかいし』


『うむ、カーライルよりしっかり、迷わなかった』


『俺だって、いざという時は迷わん』


『嘘はダメ。リョウは嘘ついてない』


『はぁぁぁ、今はやめないか。トール。確かにカーライルはいざという時は迷わんぞ。……5回に1回は迷うかもしれんが』


「おい!!」


『それに今は、その話しをしている場合ではないだろう。カーライル、どうする? リョウをこのまま1人で行動させるつもりか? 記憶を失っているのだからな、魔獣どころか。この森のことすら知らないのでは……。今回は俺が助けたが、すぐにまた襲われて死んでしまうぞ』


「分かってる。お前の勘を信じればリョウは危険人物ではないからな。とりあえず俺達の家に連れて行く。悪いがタイラー。お前はリョウのいた場所を匂いで探してもらって、何かリョウについての情報がないか、調べてみてくれないか? もしかしたら家族、仲間が探しているかもしれないからな」


『分かった』


『リョウ、お家に来る?』


「ああ、状況が分かるまではな。もしも何も分からなければ、後のことはその時に考える」


 おにぎり2つ目を食べ終わった頃、カーライルさん達の話し合いが終わった。そして何と、こんな見ず知らずの不審者の俺を。俺が嘘をついていないと、信じてくれたみたいで。

 ここは危険だからと、自分達の家へ連れていってくれて、泊めてくれると言ってくれたんだ。


 まさかの提案に、俺は何度もお礼を言った。この後どうするのか、どうなるか。本当に困っていたからな。それにまた、サンダーファングタイガーや、他の生き物に襲われたら、今度こそ生きていられないだろう。


 もうすぐ日が暮れるという事で、すぐに移動の準備を始めた。と、言っても、荷物の確認をしただけだけど。


「よし、行くぞ」


 カーライルさんに続き、歩き始める俺。と、その時だった。草むらが揺れて何かが飛び出してきたと思ったら、その飛び出してきた物が俺の顔にへばり付いてきた。


「うわっぷ!? な、何だ!?」


「ああ? 何でフェアリーラビットが、お前の顔にへばり付くんだ?」


 俺は何とか、顔にへばり付いた物を引き剥がした。そして引き剥がした物を見てみれば。それは俺が逃した子羽根つきウサギ(仮)だった。お前、フェアリーラビットっていうのか。


「良かった、無事だったんだな」


『きゅうぅぅぅ!!』


「そいつのことを知っているのか?」


 俺は簡単に子フェアリーラビットについて話した。


『なるほど、それでリョウのことを気に入って、家族にリョウの所へ行くと言って戻って来たのか』


 話し終えると、今度はフェアリーラビットと個人的に話しを始めたタイラー。


 タイラーの話しによると、この子フェアリーラビットは、自分を助けてくれた俺の事を、気に入ってくれたらしく。

 俺のことがもっと知りたい、俺と一緒に暮らしたい、と思い。その事を家族に伝え、俺の元へ来てくれたらしい。


「フェアリーラビットが人を気にいるなんて珍しいな。リョウが良ければ、そいつを連れていってやったらどうだ?」


 もちろん俺を気に入ってくれたなんて、とても嬉しいけれど。俺はカーライルさんにお世話になる身だからな。


「何だ。そんな事を気にしてるのか。魔獣と暮らすなんて当たり前の事なんだから、気にせず連れてくれば良い。大体チビが1匹増えたところで、対して変わらんだろう。よし、お前も一緒に行くぞ」


『きゅい!!』


 返事をするように鳴くと、俺の頭の上に飛んで乗ってきた子フェアリーラビット。さすが羽根つきだ。可愛いフェアリーラビット、地球のウサギが飛んでも可愛いだろうな。


 そんな事を考えながら、俺と子フェアリーラビットは、カーライルさん宅でお世話になることが決まった。

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