再会 1
小説初執筆となりますので、大変稚拙な文章になってしまうと思いますが正直な感想など頂けると幸いです。
仙台発21時55分の東北本線下りの電車。
名古屋から仙台に転勤になり二ヶ月。毎日のように残業に追われ、帰りはこの電車になるのが常だ。ただ、実家から通える距離なので自宅に帰ってからの家事をする必要がないので楽とは言え、やはり自宅の最寄駅から仙台駅までの片道約40分の時間が惜しくもある。
発車まではまだ10分ほどある。僕は電車に乗り込んで空いている席にいつもの具合に座り、携帯電話を操作しているように装い発車を待った。明らかに冷静ではないことは自分でもよく分かる。
つい数分前の出来事だ。仙台駅の二階正面の改札口を通ろうとした時、何気なく視線を前にやると一番線のプラットホームに降りていく彼女を見かけてた。彼女を見たのは成人式以来だから4年ぶりだ。
電車に乗り込む際に細心の注意を払った。彼女らしき人物が乗っていない車両を選んだつもりだ。そして、今だって顔を下に向け携帯電話の画面を覗きこんでいる。見つけられないようにというよりも心情的には隠れていると言ったほうが近いかもしれない。
彼女のことが嫌いな訳じゃない。ただ、彼女と会ってしまうことが怖かった。それまで蓋をしてきたある感情を自分で認めてしまうのが怖かった。
腕時計に目をやると3分進めてある時計が21時56分を指している。
「よし」
発車まではあと2分。そう思った瞬間に小さかったが思わず声を出してしまった。
なんとか隠れきった。これが正直な気持ちだろう。
安心しきった僕はバックからシステム手帳を取り出し明日の仕事の予定を確認し始める。だが、彼女のことが完全に頭から消えた訳ではない。とはいえ、徐々に平静さを取り戻している。冷静になって考えてみると、僕の危惧していたことが起こりうる可能性が低いことに気づいた。、数年前のことになるが大学生の頃、帰省した際に友達に会う為仙台行きの電車に乗った時のことを思い出した。
その時、たまたま彼女も同じ電車に乗っていた。席もお互いを確認できている距離だったが話しかけてくることはなかった。成人式の時もそうだ。あんな小さな町の成人式でも話すことはなかったんだ。お互いに持ち合わせている感情は違えど、顔を合わせたからといって話しかけづらい相手であることは一致している。そう思えば、より一層の安心感が得られた。
隣に誰かが座った。システム手帳を見ている僕の視界の左側に黄色いバックが飛び込んできたので反射的に前傾気味だった姿勢を少しだけ起こし、左を見た。
すると、少し恥ずかしそうにはにかみながら「久しぶりだね」。
10年前の初恋の彼女が座っている。