菊池ってかっこいいね
「ねえ、菊池ってかっこいいね。そーゆーところが凄く好き」
しまった!!
と思った時には遅かった。
つい口から出てしまった。
「……はあ?なに?からかってんの?」
驚いた菊池が呆れた声で答える。
高校一年で同じクラスになってから、本当はずっと好きだった。
好きなゲームが同じで話が盛り上がり、お互いの家でゲームをしたり、一緒に攻略を進めていくうちに菊池の人柄に惹かれていった。
でも、恋愛の話をする事は一切なかったし、もちろん手を繋ぐなんてもなかった。
この関係を壊したくなくて、好きの気持ちは自分の胸の内に秘めていたのに。
「ちが…くて…。……だってかっこいいと思ったから……つい…」
言ってしまった言葉を引っ込める事が出来ず、急に恥ずかしくなると同時に、かーっと熱を持ちだす顔。
きっと赤い顔になってる。
恥ずかし過ぎて両手で顔を覆い俯く。
何も答えない菊池。
無言の時間が永遠に思えた。この場をなんとかしようと顔を上げると、私と同じ…ううん、それよりも真っ赤になった菊池の顔。
「あれ?あの……菊池?ごめん、気にしないで?」
訂正するようにそう告げると、菊池はフイっと目を晒し小さな声で言った。
「好きだ…俺……ずっとお前の事…好きで……」
言葉の意味を理解して…また顔に熱が集まる。
「うん……私も……好き…」
そう答えるのがやっと。
心臓が破裂しそうなほど恥ずかしくて、嬉しくて…
次の一言を探す。
するとそこでみっちゃんが、タタタタ…と、リズミカルにスネアドラムを演奏しだした。
それに合わせて皆んなもそれぞれ自分の楽器を演奏しだす。
ヒロがトランペットを、武田がティンパニを鳴らす。
トロンボーン、フルート、バイオリン。
指揮者の菊池が機能していないのに、一体感があり、今までで一番上手く演奏できている。
高校吹奏楽部コンクールの演奏曲練習中の告白。
楽曲は「ラデツキー行進曲」
コンクールの結果は、3位でした。