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本当だなんて聞いてない!  作者: つじ みやび
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プロローグ:事の始まり

「今日の活動はっぴょ~~う!」「「「いえーい!」」」


 誰でも、仲のいい友人とはつるんでいたいものだ。それはこの私立丸縁女子学院でも変わらない。ここに幼馴染四人組で作った妄想の裏組織『凸凹ギルド』がある。毎日放課後に空き教室に集まり、各々が考えてきた妄想を発表し語り合うのが凸凹ギルドの日々の活動内容。今日もその活動が始まろうとしていた。


「まず私からね。今日電車で目の前に立ってたスーツのおじさんさ、実は闇の組織ヤミーノの人みたいでさ。うちのこと勧誘しようとしてたみたいなんだよね。いやぁ、ついに見つかっちゃったかぁ!うちの秘めたる能力が!」

 まず初めに話し始めたのはセレ。自分の髪をいじりながら、自慢げに話す。


「あんたの秘めたる能力って何よ、大食い?www次はあたしね。あたしは今日、図書館で怪しげな先輩見かけたよ。あの人いっつもあそこでなんか分厚い本読んでんのよね。なんかの魔術極めてるんじゃない?その魔法、その姿、あたしには見抜けるぜ……」

 セレの妄想に突っ込みを入れながら、次にメグが発表。


「メグちゃんのだと、見抜いたうえで自分も反撃魔法とか使えるとかっこいいよねぇ~。次はユメね。ユメはね、通学路でいつもすれ違うおばさんの様子がおかしかったのが気になってるんだよね。きっとあれは、誰かからの洗脳を受けたんだわ……。」

 小さな体でぴょんぴょんと飛び跳ね、ウェーブがかった髪を揺らしながら語るのはユメ。


「みんな大変だなぁ!拙者は今日!亜空間に隠している刀のメンテナンスをしておったのだ!あれはいいぞぉ!精神統一ができる!げほっ……皆もやってみるといい!」

 最後にツキノは自身の出せる中で一番大きな声を出し、むせながらも自分の妄想を語る。


 一通り全員の今日の妄想が発表されたところで、妄想のブラッシュアップが始まる。つまりは、みんなでニヤニヤしながら追加で妄想を話そうぜタイム。


「セレのさ、その敵対組織の名前何とかなんないの?安直すぎん?wwww」学校に来るまでに買っておいたチョコレートをバリバリと食べながらメグが突っ込む。


「いやいやメグ、これくらいわかりやすい方が良いんだよ。敵!って一発で分かるじゃん。うちらの日常は、うちらで守るぞーってなるじゃん!てか、今日もチョコ?飽きるわー。ニキビできるよ?」


「飽きんなら食べんな!文句言うなら食べんな!!うちの金で買ったんだぞ!あっもう!!」


「メグちゃん、許してあげなよ。セレちゃんも、人の嫌がる事しないの。そうだ、さっきのセレちゃんのお話だけど、結構わかりやすいし覚えやすいよね。ヤミーノ。妄想もしやすい。ユメは好きよ。」そういってユメははにかむ。


「ユメ~!ほっぺすりすりさせて~~!!!」

「やだ。」

「ユメ、そんなにセレのこと甘やかすんじゃないよ。」


 そんな三人を外から見ているのがツキノ。

「仲良きことは、良き事なり。……うらやましいな。(ボソッ)」

「ツキノ!一人ならさ、一緒にユメのほっぺすりすりし隊結成しよ!」


 何とかあの輪に入れないかとタイミングをうかがっていたツキノにセレが声をかける。 思わずやった!という表情を浮かばせながらツキノはまんざらでもなさそうに三人の方に歩いていく。


「や、やぶさかではない!拙者も!ユメ殿のほっぺすりすりし隊に入隊するぞ!」

「だめ。」

「な、なんでよぉ。」

 ユメの冗談に気づかず、しゅんと空気が抜けたようになってしまうツキノ。


「ほんっとにツキノのそのギャップwwwwウケるんだよなァwwww」

「ほらメグからかわない!ツキノ泣いちゃうでしょ!」

「泣いてないもん!!!!!」


 ……まぁ、ブラッシュアップというよりいつも通りのじゃれあいなのだが。

 そうしてしばらくおしゃべりしたり、最近はまっているゲームやアイドルやマンガなどのプレゼンをしたりしているとどんどん日が暮れていく。これもいつものこと。



「じゃあ今日もそろそろ解散する?」

「そうだな、うちの門限もそろそろだ。」

「うん、みんなの明日のお話も聞くの、楽しみだなぁ。」

「拙者もいいぞ!では、今日の解散の音頭は誰がとる!」


 日が暮れて家に帰る時間が近づけば、誰かが音頭を取ってみんなで掛け声をして、元気に帰る。このチームの、小学生の頃からの決まりだ。そして音頭を取る人は毎回じゃんけんをして、一番初めに負けた人がやるというのも暗黙の了解。1日の最後まで楽しい方が良いよね、負けた人の罰ゲームじゃなくて、負けた人の特典の方が一日が楽しく締まるよねという全員の合意を得て決まったルールだ。

 ツキノの「誰が」というセリフで全員が顔を見合わせ、数秒後。


「「「「じゃん!けん!ぽん!!!」」」」

「というわけで今日はあたしだな。あたしから時計まわりで。それじゃぁいくぞ~~」というメグの声がかかると、いつもの解散の音頭をとる。


「明日もあたしたちは!」とメグが。

「元気に妄想してぇ、」とユメが。

「この場に集うことを!!!!!!」とツキノが。

「誓います!!」とセレが。


 最後に、「「「「凸凹ギルド!!!ばんざ~い!」」」」と全員で声を合わせる。そうしてその日も無事に妄想大会は終わり、こんな妄想現実になるわけがないよねぇ~とにやにやしながら、いつも通り全員家路についた。


 ◆


 翌日。仲良し四人組がいつも通り妄想を頭にいつものの空き教室に集まると。

 謎の赤いうさぎのような長い耳を持つ生物が、教団の上にだるそうに座っていた。


「なぁんでヤミーノの存在知ってるの?ちみたち。ぼくちゃんと会ったりしゃべったりしたことないよね?謎すぎるんですけどぉ。」


 うさぎ?いやでも二足歩行してるし……なんかしゃべってるし……。なんか全体的に赤いし……。いやそれよりも。全員こうつぶやくしかない。



「「「「え……?????ん……????」」」」



 そうして「いつも通り」の妄想大会は終わりを告げ、思わず全員同じセリフを吐いていた。


「「「「ただの妄想なのに、本当だなんて聞いてない!」」」」


 それはそれは、きれいなハーモニーだったというのは後日談。

日常の裏に潜むもの、大好きなんです。

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