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40 婚約

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

「そうでしたの、なんだか色々と迷惑をかけてしまったみたいで、ごめんなさい」


「君は悪くない。逆に謝られるとつらいよ。それに相手が殿下では僕では太刀打ちできないしね。仕方なかったんだよ。このことは叔父様も見ていて知っているから、君に伝えると思っていた」


 そう言うと、ヘンリーは改めてアリエルに向き直る。


「君は今幸せか?」


 アリエルは無言で頷くと、ヘンリーは満足そうな顔をした。


「ならそれでいい。じゃあ、僕は失礼させてもらうよ」


 そう言って去っていった。すると横にいたファニーがアリエルの耳元で囁く。


「やっぱりレイディーは人を引き寄せるんだね~」


「ヘンリーはどうせ婚約するなら知っている相手がいいと思ったんですわ」


「あ~、そう。彼かわいそう」


 ファニーがそう答えたその時、横から声をかけられた。


「アリエル嬢、王太子殿下とのご婚約おめでとうございます」


 声の方を向くとヴィルヘルムが立っていた。


「ハイライン公爵令息、祝福の言葉ありがとうございます」


「オパールは主役の二人を邪魔しないように、父に捕まっているからしばらくは邪魔者は来ないよ」


 ヴィルヘルムはそう言って笑った。


「あら、邪魔者なんて思ったことありませんわ」


「そんなこと言うと、オパールのことだから二人の新居にまで押し掛けかねないよ」


 それを聞いてアリエルはオパールならやりかねないと思い、無言でヴィルヘルムと見つめ合うと、お互いにクスクスと笑った。


「ところでアリエル嬢、婚姻する前に一つエルヴェについて話しておきたいことがあるんだ」


「なんでしょうか」


「私たちは寄宿舎で一緒だったんだが、その頃からエルヴェが女物のペンダントを着けていると、みんなの間で噂になってね」


「あら、では誰か大切な方の形見とかかもしれませんわね」


「いや、それが本人が言ったんだが『大切な最愛の家族からもらった』と。それで一時期エルヴェが母親のペンダントを寄宿舎に持ってきたと騒ぎになった」


 アリエルはエルヴェにそんな一面があることに驚いたが、母親を思うことは悪いことではないと思った。


「そんなこと、たいした問題ではありませんわ」


「まぁ、寄宿舎に入った頃は確かに私たちも幼かったから、母親の物を持っていてもおかしくはないが……。問題は城へ戻ってきてからなんだ。城に戻ったのだからあのペンダントを着けることはなくなるだろう。そう思っていたのだが、エルヴェは逆に以前にもましてペンダントに執着するようになった。何かことあるごとにペンダントを首から出し、愛おしそうにキスをするようになったんだ」


 アリエルはエルヴェらしくないと思いながらも、少し考えてから答える。


「王妃殿下と何かあったんでしょうか?」


「あの王妃殿下と何かあるとは思えないが……。とにかく君は王妃殿下とエルヴェとの関係で苦労するかもしれないし、エルヴェのそんな態度を見ても大目に見てやって欲しいんだ」


「わかりましたわ。それぐらいなら問題ありませんわ、心配してくださってありがとうございます」


 ヴィルヘルムは微笑む。


「君が優しい女性でよかった。エルヴェは幸せ者だな。それにしても、王妃殿下があんなに子供っぽいペンダントを好むだなんてちょっと意外だったよ。雪の結晶のペンダントで幼い少女が好みそうなペンダントトップなんだ」


 それを聞いた瞬間、アリエルは自分の顔が一気に赤くなるのを感じた。そのペンダントは初めてエルヴェに会ったときにアリエルがプレゼントしたものだったからだ。

 アリエルのその様子を見てヴィルヘルムは何かを察したようだった。


「なるほど! そういうことだったのか! あのエルヴェが母親のペンダントを持っているはずがないからね」


 そう言うと声を出して笑い出した。


「ハイライン公爵令息? そんなに笑わなくても……」


 アリエルが恥ずかしくて赤くなった頬を両手で押さえながらそう言うと、ヴィルヘルムはなんとか笑いをこらえて答える。


「いや、違う。君のことを笑っているわけではないんだ。エルヴェがペンダントをくれた人物を『恋人』や『婚約者』ではなく『家族』からもらったと言ったことがおかしくてね。いくらなんでもあの頃から君を家族として意識していたのだと思うと……まぁ、その、エルヴェの気持ちが報われて本当によかったとしか……」


 そこへエルヴェが戻ってきた。


「なんだ? 君たちはいつも僕のいないところで楽しそうに笑っているが、一体どんな話をしているんだ」


「やぁエルヴェ、君の不名誉な誤解が解けたところだから安心してほしい。とにかく、君たちが婚約できて本当によかった。幸せになれよ」


 そう言うとヴィルヘルムはエルヴェに手を差し出す。


「言われなくとも幸せになるに決まっている」


 エルヴェは憎まれ口を叩くと、その手を握り返した。


「では私は失礼するよ」


 そう言ってヴィルヘルムは軽く手を上げ去っていった。


 そこでずっと黙っていたファニーが口を挟む。


「王子も戻ってきたし、僕も少しここを離れていいかな~? あんまり目立つと貴族たちが僕を放っておいてくれないからさぁ~、つかれちゃうんだよね~。僕は裏方の人間だからね~」


 ファニーはそういうと、どこかへ行ってしまった。


 ファニーは本当に不思議な存在だと思いながら、アリエルはその背中を見つめた。


 その時、突然アリエルはエルヴェに抱き上げられた。


「エルヴェ?! みんな見てます。恥ずかしいですわ!」


「かまわない」


 そう言うとエルヴェは嬉しそうにアリエルを抱きかかえたまま、ぐるぐると回ったあとその場にアリエルを立たせると抱きしめた。


「ありがとう、アリエル。私と歩む道を選んでくれて。ファニーから君が国から出ていこうとしていると報告を受けたときは、血の気が引いた」


「ファニーはそんなことまで報告してましたの? なんだか恥ずかしいですわ」


「そんなことはない。そこまで思い詰めるようなことをした私たちがいけないのだから。さぁ、今日は君と私との婚約発表の場だ。国中に君が私のものだと宣言できるのは最高の気分だよ」


 そう言って微笑むと、懐からリングケースを取り出して、アリエルに開いて見せた。


「婚約指輪だ」


 見ると三カラットほど在りそうなクラリティの高い一粒ダイヤの指輪だった。

 アリエルはエルヴェに手を差し出すとエルヴェは嬉しそうにアリエルの指にそれをはめた。


「こうすると君を自分のものにできた気がして嬉しいよ」


 そう言ったあともう一度アリエルに口づけた。


「お姉様〜!!」


 向こうから声がしたと思うと、いつものようにオパールがアリエルに抱きつく。


「オパール、私の婚約者にベタベタするんじゃない」


 エルヴェが横からそう言うと、オパールはアリエルの顔を見上げる。


「お姉様、嫌ですわ〜(わたくし)のお姉様がエルヴェに汚される〜」


 アリエルは微笑んでオパールの頭を撫でた。


「でもエルヴェと婚約しても、オパールとはいつまでも仲良くしたいと思っていますわ」


 そこでエルヴェは咳払いをすると言った。


「だが、アリエルはもう名実ともに私のものだ」


 それを聞いてアリエルは一瞬で顔を赤らめ俯いた。その様子を見ていたオパールはあからさまにがっかりした顔をした。


「なんてことなの? (わたくし)のお姉様が……」


 オパールは涙目になる。そんなオパールにエルヴェは微笑む。


「残念だったな、オパール」


 そして、エルヴェはアリエルと手をつなぐとオパールから奪うように腰に手を回し、そのままアリエルと一緒にホールの中央へ歩み出た。


 そして注目を集めるように手を叩く。


「この度アリエル・ファン・ホラント伯爵令嬢と(わたくし)ことエルヴェ・ド・モンフォール・アスチルベは正式に婚約を取り交わしたことを発表する。まだまだ未熟者である私たちをどうかこれからも温かい目で見守ってほしい」


 そう言ってエルヴェがアリエルと手をつないで頭上に掲げた。その場の者たちは一斉に歓声をあげ若い二人の婚約に祝の拍手を贈った。


 そしてエルヴェはアリエルの耳元で囁く。


「君を愛しているよ、この誓いは永遠に……」


 そしてアリエルに口づけた。後ろでオパールの叫び声が響いたが、エルヴェは一切気にする様子はなかった。


 こうしてアリエルの二度目の人生は幸せが続いていくのだった。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


おまけ


 ヴィルヘルムはアリエルとオパールを見つめたまま、エルヴェに耳打ちした。


「エルヴェ、最近アリエルを見つめるオパールの瞳の中にハートマークがみえるのだが……」


「ウィル、うるさいぞ。わかっている! だが相手はあのオパールだぞ、下手に忠告できないだろう!」


 そう言うとエルヴェは頭を抱えたのだった。

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