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31 ドレス

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 オパールからは手紙をもらった。手紙にはアリエルの体調を気遣う言葉と、体調がよくなったらまた屋敷に遊びにきてほしいと書かれていた。


 アリエルは屋敷に戻って一人で冷静に考えるようになってから、自分の勘違いでオパールを信じきれなかったことを申し訳なく思った。


 そうして迎えたお茶会の当日、アリエルはドレスを預けているファニーの屋敷へ行かねばならなかったので、早めに屋敷を出ることにした。

 とりあえず適当なドレスを来てエントランスに行くと、なぜか先に準備を済ませたアラベルがそこに立っていた。


「アリエルお姉様!」


 アリエルに気づいたアラベルはそう言うと、例のドレスを見せつけるようにアリエルの前で一回転して見せた。


「本当にこのドレス素敵ですわよね。(わたくし)とても気に入ってますの!」


 アリエルは作り笑顔で答える。


「本当にドレスが素敵ですわね」


「アリエルお姉様もそう思います?」


 そう答えてアラベルはアリエルを上から下まで見る。


「アリエルお姉様には、そのドレスがとってもお似合いですわ! まだ時間はたくさんありますし、(わたくし)はもう少ししてから行きますわね」


 そう言うと、意気揚々と二階へ上がっていった。時間があるのにここに居たのはアリエルに見せつけるためだったのだろう。


 苛立つ気持ちを抑えて、さっさと気持ちを切り替えると慌てて用意されてた馬車に乗り込みファニーの屋敷へ向かった。


「僕のレイディー、待ってたよ。さぁ、着替えておいで」


 屋敷へ入るとファニーがそう言って出迎え、ドレスの置いてある部屋へ案内してくれた。

 部屋へ入ると中央にドレスが飾られていた。そのドレスは白地の布に光沢のあるマリンブルーの刺繍が細かく施され、その上からサファイアが大量にちりばめられた薄いレースが重ねられていた。

 袖口や裾にはふんだんにフリルがあしらわれ、胸元には大きなレースのリボンと花モチーフの装飾が大胆に斜めに飾られている。


「君がサファイアが流行るっていってたからさ~、サファイアを使ってみたよ! 驚いたけど本当に流行りだすなんてね~。最近になってやっとサファイアを使ったドレスの注文が入るようになったよ~。お陰でこのドレスは流行りの最先端!」


「なんだかそんなドレスを着たら、目立ってしまって恥ずかしいですわ」


 ファニーは手招きするように手をひらひらさせると答える。


「主役がなに言ってんのさ~」


 そう言うと手を叩いた。それを合図にメイドたちがアリエルを取り囲む。


「アリエルお嬢様、(わたくし)たちにお任せくださいませ!」


 そう言うとあっという間に支度を整えた。そして、ファニーと連れ立って王宮へ向かった。






 会場に入ると、オパールがアリエルに気づき一目散に駆け寄ると抱きつき見上げると言った。


「お姉様、(わたくし)とっても会いたかったですわ。それにしても、前回のお茶会では大丈夫でしたの? お姉様は帰ってしまわれるし、(わたくし)とっても心配したんですのよ?」


 オパールはそう言うと、アリエルから体を離し腰に手を当てて膨れっ面になった。


「それにしてもなぜアラベルがお姉様のドレスを? アラベルに聞いてもこのドレスは自分のドレスだと言い張って話になりませんでしたわ」


 アリエルは苦笑しながら答える。


「それが(わたくし)も訳がわかりませんの」


「そうやってお姉様が甘やかすから、アラベルが好き放題にするんですわ! あとでしっかり追及しないといけませんわね」


 そう言うと、向こうで貴族令息に囲まれているアラベルを睨んだ。アリエルもオパールの視線の先にいるアラベルを見つめる。


 アラベルは視線に気づくと、満面の笑みでこちらに駆け寄った。そして、何人かの令息がその後ろに続いて歩いてくる。


「アリエルお姉様、どちらにいましたの?」


 そう言うとアリエルのドレスを見てはっとする。


「アリエルお姉様、そのドレス(わたくし)のものではありませんか?」


 その時、アリエルの背後にいたファニーが声を出して笑い始めた。


「こりゃ傑作! このドレスは、僕がアリエルのためだけにデザインして作ったドレスなんですけど~。まさに盗人猛々しいとはこのことだよね~」


 するとアラベルはショックを受けたような顔をした。


「ご、ごめんなさい。勘違いしていたみたいです」


 そう言ったあと、アリエルの横でアラベルを睨むオパールに気づきアリエルに訴える。


「それよりアリエルお姉様、ハイライン公爵令嬢と王太子殿下に説明してください。ドレスのことは誤解だって」


 アリエルは呆れながら答える。


「誤解ではありませんもの、そんな嘘は言えませんわ。それに間違えたとして、それがわかっていて今日も堂々と人のドレスを着てくるなんてアラベル、貴女恥ずかしくありませんの? (わたくし)は姉としてとても恥ずかしいですわ」


 そう言われアラベルは驚いた顔をしたあと、瞳に涙を浮かべた。


「そんな、酷いですわ」


 するとアラベルの後にいた令息たちがアラベルを慰めてからアリエルに言った。


「君はアラベルの姉なのだろう? なぜそんなに冷たいことが言えるんだ! 殿下もきっと、君に騙されているんだろう」


 アリエルが言い返そうとした瞬間、背後から声がした。


「騙されているのは君たちの方だ」


 エルヴェだった。エルヴェはアリエルとアラベルのあいだに入ると、アリエルを自分の背後に隠した。そして、アラベルを擁護する貴族を睨むと言った。


「君はたしかシャティヨンの息子だな? 君は自分の言ったことを後悔することになるだろう」


 アリエルはエルヴェの背中越しにアラベルの取り巻きの貴族たちを見て、前回自分が冤罪で投獄され周囲の貴族から(さげす)まれた記憶を思い出していた。


 怖くなり思わずエルヴェのコートをギュッとつかむと、エルヴェはその手を強く握った。その横でオパールはアリエルを安心させるように寄り添う。


 その時、アラベルが訴えた。


「本当に盗ったんではありませんわ! (わたくし)の部屋に置いてあったから自分のものだと思ってしまっただけで、アリエルお姉様のドレスだと知りませんでしたのに。それに貸してくださったっていいではありませんか! 酷いですわ!!」


 アラベルは涙をポロポロとこぼし駆け出した。取り巻きの令息たちもアラベルの後ろを追いかけるようについて行く。


 そこでエルヴェは取り巻きたちの背中に向かって言い放った。


「君たちにはしっかり己の行動の責任を取ってもらう。覚えておくがいい」


 彼らは立ち止まると顔を見合わせ一瞬追いかけるのを躊躇(ためら)ったが、エルヴェに一礼するとアラベルを追いかけていった。


(おろ)かな連中だ……」


 エルヴェはそう呟くと(かぶり)を振り自嘲気味に笑った。


「それは私も同じか……」


 そして振り向くとアリエルを心配そうに見た。


「アリエル、大丈夫か? 気分を悪くしたのではないか?」


 アリエルはなんとか微笑み返した。


「ありがとうございます。オパールや殿下が守ってくださったので大丈夫です」


 そう言ってオパールの頭をなでた。オパールは満足そうにアリエルに抱きつくと顔をすりすりしながら言った。


「よかったですわ、(わたくし)でもお姉様のお役に立てましたのね!」


「もちろんです。とても心強かったですわ」


 すると、オパールは嬉しそうに微笑んだ。


 その時、アリエルは周囲の人間たちがこちらを興味深げに見ていることに気がつき俯いた。

 すると、エルヴェが一歩前に出てアリエルの手を上に掲げ周囲に向かって宣言した。


「ご覧の通り、私にとってアリエル嬢は大切な存在だ。それ相応の態度で接してほしい」


 アリエルはその台詞に驚いて顔を上げるとエルヴェを見つめ、周囲にいた令嬢たちは絶望的な顔でアリエルを見つめた。


 するとオパールがアリエルに抱きついたまま言った。


「エルヴェ、お姉様を独り占めにするのは許せませんわ! お姉様は(わたくし)のお姉様でもあるんですからね!」


 その様子を見ていた周囲の貴族たちは少しざわめいたあと、笑顔でアリエルたちを取り囲んで婚約のお祝いを述べた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


個人的にDMで返事をさせていただいていたのですが、あまりにもご指摘をいただくことが多いのでこちらにて失礼致します。


時々誤字脱字にてご指摘いただいているパイプラインの削除に関してですが、ルビを入れるための仕様です。


このパイプライン→|を消してしまうとルビをつけることができなくなってしまうので、ご理解のほどよろしくお願い致します。


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