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ゾンビ野郎改めルト

 冒険者ギルドに戻ってから僕は討伐証明を受付のマリンさんに見せた。

 マリンさんは何度も僕とそれを見比べている。

 この場にいる冒険者達も緊張した様子で見守っていた。


「こ、これ、あなたが?」

「ブルとカークに案内してもらったおかげでスムーズに討伐できたよ。全部でいくらになるの?」

「信じられない……。五級相当の魔物とはいえ、群れたら三級でも油断できないのに……」

「いいから早くしてよ」

「は、はいっ!」


 マリンさんが大急ぎで数えてから報酬額を提示してくれた。

 その額は12万ゼルだそうだ。

 数は狩ったけど五級の魔物の報酬額はあまり高くない。

 一匹あたり大体1500から2000辺りだそうだ。


 それでもじゃらじゃらと音が鳴る硬貨が少し心地いい。

 これが自分の仕事に対する成果だと思うと、冒険者にハマる人の気持ちが少しわかった。


「ゾンビがあんなに魔物を討伐するなんて……」

「ブルとカークのおかげだろ?」

「あの二人でもあそこまでの数は無理だろ。ていうかあいつら、様子がおかしくないか?」

「棒立ちして心ここにあらずって感じだよな」


 ブルとカークは一言も喋らずについてきていた。

 目の前で手を振っても目が動かない。

 死んでないのは確かだけど、心のほうは無事じゃないかもしれない。


 やりすぎたかなと思ったけど、僕を殺そうとしたんだからこのくらいは我慢してほしい。

 ブルとカークは力にものを言わせて僕を虐げた。

 今は僕が強いから立場が逆転している。ただそれだけだ。


 強者と弱者という概念がある限り、抗っても無駄だと思っている。

 いくら僕が強くても強者と弱者の構図は存在し続けるし、壊すのは不可能だ。

 そんなもののために戦い続けるなんてバカげている。


 いわゆる憧れのヒーローになるつもりはない。

 僕は思うがままに行動して、時には裁くだけだ。


「マリンさん。これで四級に昇級できる?」

「それはこちらで厳正に審査させていただくので……数日ほどお時間をいただけますか?」

「いいよ」


 マリンさんの話では昇級するにもギルド会議を行って決めるらしい。

 昇級に値するかどうか、ギルド支部長他のメンバーに認められたら晴れて昇級だ。

 果たして昇級できるのかな? 楽しみだなぁ。

 

「ブル、カーク。これだけのお金があれば服を買えるかな?」

「じゅ、十分だ……」

「じゃあ、服が売ってるところに案内してほしい」

「か……」

「か?」


 ブルが床に手をついて頭もこすりつけた。それを見たカークも続く。


「勘弁してくれぇ! もう解放してくれぇ! 謝る! 謝るからぁ!」

「なに? 突然どうしたの?」

「お前を殺そうとしたことを恨んでるんだろ!? お前がなんでそんなに強くなったのか知らねぇけど謝るよ! 有り金も全部やるから!」

「あー……そういえば気になったんだけどさ。なんで僕を殺そうとしたの?」


 ギルド内が騒然となる。

 叫んだブルは正気に戻ったかのように周囲を見渡した。

 確かに冒険者達はブルとカークに対して疑問の言葉を口にしている。


「殺そうとしたってどういうことだよ?」

「あいつら、そこまでやったのか? やりすぎだろ……」

「バレたら同業者からも命を狙われかねない悪事だぞ」


 いくらゾンビとバカにされていた僕相手とはいえ、殺そうとしたなんて誰も快く思わない。

 僕から言わせればあの人達が言ったところで、なんだけど。

 見て見ぬ振りどころか、一緒になって蔑んでいたんだ。

 

 一線は越えなかったというだけで本質は変わらない。

 もしブルとカークが死んで断罪の間で裁かれるとしたら、確実に畜生獄行きだろう。

 でもだからといってあの冒険者達を同じように裁くかとなれば、話は別だけど。

 

 ブルとカーク、他の冒険者達。

 いわゆる魂の質はそう変わらない。

 立場や状況が違えば、あの人達も同じことをしていた可能性さえあるのだから。


「ブ、ブルさん。やばいっすよ……そんなの大声で言っちまって、どーするんすか……」

「ゾン……いえ、ルトさん! お願いです! もう二度とあなたに手を出すような真似はしません! 見逃してください!」

「おい、ブルさん、しっかりしてくれ!」


 半狂乱でブルが僕にすがってきた。

 僕としては特に恨んでないし、謝られても困る。

 すがりついてくるブルを優しく引き離してから、笑いかけた。


「だからなんで僕を殺そうとしたの? 誤魔化しなしでお願い」

「そ、それは……」

「早く」

「ここでは、ちょっと……」

「……確かにちょっと迷惑かけちゃったね」


 いつまでも僕達が騒いでいるのはよくない。

 仕方なく冒険者ギルドを出て、人の目がつきにくい路地裏に移動した。

 二人がそこを希望するというんだからしょうがない。

 

 だけど路地裏に着いても二人は口を開こうとしなかった。

 かなり言いにくいのはわかるけど、これは僕自身のことだ。

 言ってもらわないと力づくで――


「クライブ様に依頼されたんです」

「クライブ?」


 僕が拳を作った時、カークがクライブという名前を口にした。

 クライブ、聞き覚えがあるようなないような。

 でもこんな感覚に陥る時点で聞いたことがあるんだろう。


「クライブ様が、あなたを殺せって……」

「そのクライブって誰?」

「イースタム公爵家のご子息で、このイースタム領の領主です」

「その領主がなんで僕を?」


 またもカークが黙ってしまった。歯切れが悪いな。

 少しの間、黙って待っているとカークが慌ててまた口を開く。


「クライブ様は、その。あなたがクライブ様の婚約者と関わっているのに怒って……。し、始末しようと考えたんだと……思います」

「婚約者……?」

「あの公爵家の綺麗なお嬢様ですよ。エーリィ様です」

「エー、リィ……」


 エーリィ、エーリィ。

 聞き覚えがある。だけどなぜか思い出せない。

 カークがウソを言ってるとも思えないし、エーリィは間違いなく僕と関わりがあった。


「ルト様、ご存じなのですか?」

「アレイシア、クライブという人に挨拶しにいこう。どういうことなのか、直接聞かないと納得がいかない」

「わかりましたわ。それでこの二人はどうされるので?」

「もう用はないよ」

「いいんですの? また悪事に手を染めるかもしれませんわ」

「もちろん衛兵の詰め所で自白させるよ」


 それを聞いたブルとカークが路地裏の壁を背にしてずるずるとへたりこんだ。

 何か不満があるのかな?

 誰がそのまま解放するなんて言ったかな。


「さ、衛兵のところに行こう? 言っておくけど衛兵にウソついたら……」

「はい! はいはいはい! もちろん!」

「素直だね」

「いえ、そうでも……ハハ……」


 僕に捕まったままより、衛兵のところへ行ったほうがマシとでも思ったのかな。

 法の裁きは受けてもらうし、そうなったら先日の山賊よりマシ程度の扱いを受けながら一生を終えることになる。

 晴れて自由の身になったとしても五体満足でいられるかどうか。

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