表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/165

嫌な感じ

 学校が終わって幸と下校する。


 「お姉さん今日帰ってくるの?」

 「化粧水とか家になかったから、どこか泊まりに行ったんだと思う」


 幸の親は海外赴任で一緒に暮らしていなかった。だからあの広い家で姉と二人暮らしだそうだ。

 幸は、自宅である屋敷が、大好きだと度々言っていた。


 「お父さんもお母さんも、あまり帰ってこないからさ。家が残ってるから家族を思い出せる、っていうか」

 それを聞いた時、誰もいない家の中を散策する彼女の姿を想起した。


 昔この部屋で、みんなで何をしていたのか、と思いを馳せることで、薄くなってく家族のつながりを、感じ取ろうとする姿を。

 じっとその場で考えていると、満たされていたあの頃に戻れたような錯覚を覚えて、心の温度が、わずかに上がる気がするあの感じ。

 幸もそれを味わっていたのか、なんて想像を膨らませて、勝手にシンパシーを感じていたあの頃の自分を思い出す。


 「じゃあ一人になっちゃうじゃん! ていうか警察に話した方がいいよね」

 「警察にはエリちゃんが話しておいてくれたって。うちの学校の人じゃないってメールしたら、警察に相談した方がいいって」

 「そうだね」

 「それで警察の人に話したら、パトロールの数を増やしてくれるらしい」


 それで解決すると良いが……。まあ警察がうろついているだけで、犯罪はしにくくなるだろうけど。

 「あんなことがあった後で怖いだろうし、今日はうちに来る?」

 「ありがとう。じゃあお邪魔させてもらっていい?」

 


 泊まりの準備をするために、道中幸の家に寄る。

 玄関は今朝の出来事などなかったかのようにピカピカにされていた。

 庭で用意が終わるのを待っていると、2階の窓から人影が見え、おやっとなる。


 人影の正体は八代だった。窓を閉じたままどこか遠くを見ているようで、その顔は険しく、何か考え込んでいる様子だ。

 なんだか胸がざわざわしてきて、私は八代を睨むように見上げる。

 目が合うことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ