懐かしさ
病院は混んでいて、診察を終えて病院を出る頃には、昼食時になっていた。
怪我は本当に大したことないようで、数日経てば完治するとのことだった。
「ついてきてくれてありがとう」
「どういたしまして。幸お腹空いてる? お昼どこかで食べない?」
「そうだね。悠ちゃん何食べたい?」
「私は暑いから麺食べたいな~」
「夏が近づくと白米食べる元気なくすよね」
歩きながらそんな会話をする。
病院の中にいたときはとても涼しかったが、屋外に出たとたん、ムワッとした暑さが私たちを包む。
「じゃあ学校の近くのうどん屋にしようよ」
「いいじゃん。それなら店から出た後そんなに歩かないで済むしね。そこにしよ」
懐かしいな。学校近くのうどんチェーン店には、テストなどで午前中に下校するときなどは、よく行ったものだった。
こうやって二人で歩きながらとりとめのないお喋りをしていると、鼻の奥がつんとしてくる。
24年間生きてきて、幸以上の友人はできなかった。
社会人になってからというもの、学生時代の友達と会うことなどほとんどなかった。私が地元を出たというのも相まって、尚更疎遠になっていった。
しかし会えなくてもたいした寂しさはなかった。
もしも幸が生きていたなら、きっと大人になってからも、交流が途絶えないようにしたはずだ。
他の友達とは明らかに過ごした時間の密度が違った。