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殺してくれてありがとう  作者: 絶対完結させるマン


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顔を見た

 「うわっ、風強っ!」

 昇降口を出た瞬間、叩きつけるような向かい風が吹き付けてきて、思わず叫ぶ。


 「涼しくなってきたよね」

 幸がそう言って、半袖から伸びている腕をさする。

 日中はまだまだ暑いけれど、夕方から夜にかけて気温が下がる日々が、ここのところ続いていた。


 「いつの間にか時間が過ぎていったんだなぁ……」

 自分にしか聞こえない声量で、感慨深そうに呟く。


 この時代に来て、もう結構経つ。今でも自分がここにいるという現実が信じられなくなる時が、稀にある。

 タイムリープしたことで、過去をやり直せるだけじゃなく、素晴らしい出会いもあった。


 改めてこの瞬間の幸せを実感する。死の間際に、私の願いを聞き届けてくれた気まぐれな神様に、感謝しなければならない。


 「悠ちゃん? ボーッとしてると置いてっちゃうよ~?」

 「ごめんごめん。置いてかれるのは勘弁」

 変わりゆく季節を感じながら、私たちは変わりないやりとりを今日も繰り広げる。




 校門を出て、幾分か歩いた頃だった。

 何者かが砂利を踏んだような足音が、背後からしてきた。

 後ろをそっと振り返る。

 そこには、誰もいなかった。


 ただの空耳だった?


 「悠ちゃんどうしたの? 急に後ろを見て」

 「いや――何でもない」


 気のせいのような感じもする。この前のことで、神経過敏になってるだけかもしれない。


 しかし――。


 「幸。たまには違う道通って帰ってみようよ」

 「えっ? ちょっ、悠ちゃん?」


 幸の手を掴み、街灯の多い道へと歩を進める。

 ずんずんと歩いていく私に若干戸惑いつつも、幸は大人しく手を引かれている。


 私は急ぎつつも、早足になりすぎないように注意する。誰かがつけてきているかもしれないのなら、その人物を下手に刺激しないために。


 素知らぬ顔をして歩きながら、背後へと気を配る。空を見上げるふりをして、さりげなく後ろを見て、悲鳴が飛び出そうになった。


 早歩きでこちらに向かってくる人影があった。距離は着々と縮まってきていて、驚きと恐怖のあまり、私の心臓は止まりそうだった。


 「幸、走るよ。全力で」

 「わっ! ちょっ……」


 手を繋いだまま急に駆け出したので、幸は一瞬よろけそうになったが、すぐに全力疾走の体制になり、そのタイミングで手を離して、並走する。

 走りながら、幸も後ろへ目をやる。「ひっ」とひきつった声を出して、さらにスピードを上げた。


 荒い息遣いで走る私たちの背後――少し離れた場所から、バタバタとした一人の足音が聞こえた。

 向こうも走って追いかけて来てる――身体中の毛穴がぞわりと粟立った。

 早く早く――明るくて大勢の人がいるところまで急がなくちゃ。それまで絶対に追い付かれてはいけない。


 「あそこ曲がるよ!」

 「うんっ!」

 もう少しだ。目と鼻の先の角を曲がれば、大通りに出れる。

 「きゃっ!」

 「幸!?」


 私の一歩後ろを走っていた幸の身体が、急に後ろ向きにひっくり返った。

 振り返ると、一人の人間が、地面にうずくまった幸を見下ろしていた。


 その人物は、パーカーのフードを深く被っているため、口元しか見えなかったが、その口角が興奮しているかのように上がっているのを見た途端、私の中から冷静さが消えた。


 「幸から離れて!」

 不安も危機感も吹き飛び、幸を転がしたそいつへ突進していく。

 「悠ちゃん!」


 幸の制止する声を無視して、そいつを地面に引きずり倒す。

 その衝撃でフードがずれ、隠されていた顔が露になった。


 そいつは、私たちと同い年くらいに見える少年だった。

 整った鼻筋と綺麗な肌が印象的な少年は、痛そうに顔を歪ませ、憤怒に満ちた瞳で私を下から睨み付ける。

 その視線に怯み、ほんの少しだけ拘束する力が緩んでしまった。


 彼は、そのチャンスを逃さなかった。

 少年は私を振り切ったかと思えば、目にも止まらぬ素早さで撤退していった。


 「あっ! 待て!」

 「もういいよ、悠ちゃん!」

 遠ざかる彼へと伸ばした私の手を、幸が掴む。

 「相手は男の子だし、勝てないよ。危ない」

 宥めるようなその声音で、少し落ち着きを取り戻す。

 「それもそうだね……あ、じゃあせめて――」

 ついた汚れを落としながら、立ち上がる。

 「交番に行ってこのこと話そう。確かこの近くだったはず」

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